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世界から四角く切り取られた破線

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「俺、折り畳み持ってるから、駅まで一緒に入っていきなよ」
 立ち上がると浩輔はロッカーへ向かい、黒色の折り畳み傘を手にして席に戻った。
「ほんと、何か色々ありがとう。タオルも。洗って返すから」
 申し訳なさそうに整った顔を顰めて礼を言う泉を「いいから、いいから」と浩輔は何度も抑えるのだが、泉は終始礼を言いっ放しだった。
 自宅のある大槻駅まで着くと、泉と浩輔の帰り道は逆方向だった。
「あ、そうだ、明日お弁当作ってくるから、パンは買ってこないで」
 随分前の約束に、浩輔は少し記憶を辿ったが、確か時間割表を作るのを手伝ったお礼だった。あれ以来浩輔と泉は「掲示物係」に任命された。
「それは楽しみ。期待してるよ」
 じゃぁ、と身体を翻した泉に「泉ちゃん」と背後から声を掛ける。
「俺の家、駅からすぐそこなの。今、小振りだし、これ使ってよ」
 彼女の細い腕を掴み、その手に黒い傘を握らせると、浩輔は逃げるように走り去った。 雨に濡れる事には慣れている。ただ、昔を思い出すのが辛いだけ。