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世界から四角く切り取られた破線

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「知りたいの。幸せになれないって言ってるこう君の事が好きだから。どうすればこう君が幸せになれるのか、知りたいの」
 泉は、もう全て手放すつもりだった。自分の事よりも、浩輔の事を考えていた。大輔と別れる事になってもいい。浩輔の全てを知りたい。幸せになれないという理由が知りたい。浩輔を幸せにしてあげるにはどうしたらいいのか。
 浩輔は掲示物を壁に押し付けたまま、動けないでいた。全身が拍動するように熱い。どうしたらいいんだろうかと、頭を巡らせる。
 大輔に「協力してほしい」と言われたのに、彼女はそれとは逆の事を言う。言うに事欠いて「好きだ」と。こんな俺にどうしろと言うんだ。
 浩輔は壁に手をついたまま俯き「知ったら、後悔するよ」と言った言葉はくぐもっていた。
「いいよ。知らないより知ってる方が、諦めがつくと思うし」
 近くにあった椅子を一つ引出し、泉は別の椅子に腰かけた。しかし浩輔は作業の手を止めず「俺は作業しながら話す方が、話しやすい」と掲示物の山を振り返り、一枚手に取った。
 どこから話そう。俺には過去が多すぎる。浩輔は少し目を瞑った。過去とはいったいなんなんだ。どの点を指すのか。
「今の施設は二か所目なんだ」
 うん、と泉が静かに頷く。浩輔は何かを振り切るように、瞑った目をぱっと開いた。
「前の施設は、子供が行く刑務所だ」
 泉が息を飲むのが聞こえた。けれどもう、トリガーは引かれた。浩輔は全てを話す決意をした。幼い頃からの話をした。