FLASH BACK
鷹緒に言われ、沙織は鷹緒と同じ場所からこたつの中に足を入れる。だが狭いこたつに二人並んではきついので、鷹緒は沙織を抱えるようにして後ろから抱きついた。
「あったかいね……」
「ああ……」
「なんか……怒ってる?」
沙織の言葉に、鷹緒は瞬きをした。
「え?」
「だってなんか……無理して来なくていいって言ったのに」
昼間は少なからず不満もあったが、それは本音であったため、鷹緒が息を荒げて走ってまでここに来たことに、沙織は違和感を覚えている。
「……言葉を並べるより、少しでも会えてこうして抱きしめたほうが、簡単に伝えられると思ったんだよ」
そんな鷹緒に抱きしめられながら、沙織は嬉しそうに微笑んだ。
「本当だね。なんでこんなに簡単に、不安も不満も飛んでっちゃうのかな……なんか進歩ないね、私……」
振り向きながら見上げる沙織の額に、鷹緒はキスをする。
その時、鷹緒の腹が鳴った。
「悪い……そういや腹減った」
「あはは。今思い出したって感じ?」
「そういえば、昼から何も食ってない……」
「ええ? やだなあ。何か作るね」
「じゃあ鍋」
「まあ、材料はあるけど……」
「鍋パーティーするんだろ?」
「うん」
予定よりかなり時間が遅れたものの、二人は同じ鍋をつついた。
「結局、予定通りだね」
沙織の言葉に、鷹緒も微笑む。
「初志貫徹」
「なにそれ?」
「……俺は沙織を大事にしてるってこと」
「絶対嘘だ。もっと違う意味でしょ」
「ハハ。自分で調べろよ」
間にある不安はその日に解決し、二人だけの夜は今日もこうして更けてゆく――。
作品名:FLASH BACK 作家名:あいる.華音