或る手紙Ⅲ
それくらい強烈な印象をわたしに与えたOさん。
優等生を絵に描いたようなOさんは中学2年生のときに
お父さんの転勤で宮城県に引っ越していった。
お勉強は何でもできたけれど
ただひとつ体育の実技があまり得意ではなかった。
<あまり得意ではない>のであって
全然ダメなわけではない。
付け加えるとわたしも体育が大の苦手だった。
お別れ会のときに、Oさんは自分で作った童話を
読んでくれた。
<しあわせの鈴>というタイトルだったように思う。
内容はあまり覚えていないけれど、小さな鈴が
人をしあわせにする力がある・・というような話だったと思う。
そのOさんが亡くなったという知らせがクラスに届いたのが9月。
クラス全体が大きな衝撃と悲しみに包まれた。
転校してからOさんと文通をしていたわたしは
数週間前に手紙をもらったばかりだった。
中学生なのに見たことがないくらい達筆な字を書くOさんから
見事に美しい手紙をもらっていた。
その手紙が数十年の歳月から目覚めて手元にある。
母が捨てずに取っておいてくれたから・・・
Oさんは永遠に中学生の姿のままでわたしの心にある。