超短編小説 108物語集(継続中)
「花形博士、この世紀の大発見、ビジネスとして世に打って出たらどうでしょうか?」
助手の河瀬は恐る恐る進言した。「うーん、どうしようかね」と、博士に少し迷いがあるのか、曖昧な返事しか返ってこない。
「そうですか。博士の場合、もし奥さんが知れば離婚問題に発展しかねませんからね。じゃ、この発見、封印してしまうのですか」
河瀬が残念そうに表情を曇らせた。それに反し、今度は花形博士は背筋をビシッと伸ばした。
「だが、妻からは、ここぞという時は、男ならリスクを取るものよ、と常々言われてるんだ。高解像度テレビのチャンネル『1059』、これで……、この混沌とした現代社会はもっと混乱するかも知れないが、いずれ誰かが見つけるだろう。だから決断しよう、これを世に出すことを」
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊