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超短編小説  108物語集(継続中)

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「今日の現場検証や他の情報も入れて、今わかってることを整理してくれ」
 百目鬼が芹凛に指示すると、「すでにまとめてあります」とどや顔で資料1枚を差し出してきた。
「お主、やるなあ」と鬼の頬を緩ませて目を通す。

 死亡原因  : 絞殺
 死亡推定時刻: 2日前未明
 被害者情報 : 春祭光一 46歳 金融会社 社長
         あくどい商法で、多くの顧客から恨まれていた。

「うーん、これだけでは仮説も立てられないなあ」
 ボソボソと漏らした百目鬼、あとは真顔で「本件解決のための最初の一歩、まず何を捜査すれば良いか、貴職の考えを聞かせてくれ」と芹凛に迫る。
 だが女鬼刑事はこれに動じず、「死体が入った木箱の行き先です」と言い切る。
 百目鬼はこの意見に大きく頷き、「よっしゃー、漁師たちに聞き込みをしよう」と拳を握った。
 そして三日後には新たな情報が集まった。

 木箱は近くの港で積まれて、10km沖の笑般若島(わらいはんにゃじま)に運ばれるものだった。
 島民は10人ほどの女性たちだけ。そのせいか、生業は漁師ではなく、意外にも島の洞窟を使った倉庫業。そしてこの地域では考えが及ばぬほど裕福だという。
 されども噂では、島名通り、般若がイヒヒと笑ったような女たちばかりで、かつ深夜にはゾンビが松明を持ってぞろぞろと歩くとか。こんなホラーな島に、漁師たちさえも近付かないし、誰も訪ねて行かない。

 これらの情報を一つ一つ租借していた芹凛が羨ましげに呟く。
「梱包物を永久に隠してしまいたいと思ってる客、それを受け、たとえ中身が死体であっても、まっすぐ洞窟倉庫に。保管料がずっと担保された結構なご商売だわ」と。
 百目鬼は「馬鹿言うな、俺らの天職は刑事だぞ」と活を入れ、「今から笑般若島に行くぞ」と正確に垂直に立ち上がった。