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超短編小説  108物語集(継続中)

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「あらまあ、上手に書いてくれてるわ」
 デスクで芹凛が記事を読み感心していると、百目鬼が「あのな、正義感だけで殺人事件は起こらんぞ。必ず個人的な憎悪が絡んでんだよ。ところで別館の新人展、『王妃マリー・アントワネットのギロチン処刑』の絵を見たろ、あれは逸品だと思うが、なぜ賞がもらえなかったのだ」と手にしていたコーヒーカップを芹凛に向けて突き出した。

 これは明らかに己の推理を述べろという催促だ。芹凛は背筋を伸ばし、ここぞと語り出す。
「シシィ暗殺の絵に引けを取らないあのギロチン絵、新人の作品です。雅号はミネット、その意味はフランス語で子猫ちゃん。彼女は幼少の頃両親と死別、その後慈善運動を売りにしていた美猫に引き取られる。しかしこれが食わせ物で、酷い虐待を受ける。中学時代に逃げ出し、その子猫を拾ったのが質朴剛健な前館長、そして彼女の才能を発掘し、画家に育て上げました。今回特賞候補となっていましたが、選考委員長の美猫は上納金百万円を要求。お金がなくて落選。この理不尽、怒りは尋常ではなかったと想像します」

 芹凛は唇を噛む。
 しかし百目鬼は容赦しない、「それで、犯人は?」と問い詰める。ここは女刑事の意地、「前館長と推理します」と言い切る。

 これに百目鬼は「手塩に掛け、ミネットを画家にした。だが雌狸が子猫の未来を摘む。これには怒り心頭、ギロチン絵を参考に…斬殺処刑を執行した。さっ、裏を取りに行くぞ!」と鬼の目を金属色に光らせたのだった。