超短編小説 108物語集(継続中)
相場師・燻屋銀次郎には法定相続人がいない。
しかし長年連れ添ったバツイチの内縁の妻、良子がいる。
そして良子には離婚時に手放した、それは捨てたと同然の息子の光司がいる。この光司が最近株にのめり込み、大損したという。
その穴埋めにと光司が考え付いたのが、株資産を持つ銀次郎の殺害。
銀次郎が死ねば、遺産は内縁の妻であっても、良子に相続される。
そして、たとえ光司が銀次郎とは他人の父の姓であるとしても、良子の実子である以上、最終的に母の死亡によりその遺産は光司の手に渡ることになる。
母を奪った燻屋への復讐も込め、この筋書きで、光司は母が世話になってきたので礼をしたいと銀次郎を呼び出し、殺害した。
こう結論付けた芹凛に百目鬼は深く頷き、あとは沈黙したまま天井を眺めている。
「大丈夫ですか」と気遣う芹凛に、百目鬼はギョロッと鬼の眼を剥き吠えるのだった。
「光司には金も時間もない。次の大博打は実母殺害と来るぞ。まだ銀次郎殺人の証拠はないが、芹凛、次の不幸が起こる前に、別件逮捕で身柄を確保しに行くぞ。これが鬼デカのギャンブルだ!」
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊