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超短編小説  108物語集(継続中)

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「えっ、お客さま、一見賢そうなのに、マルデアホに行きたいのですか、それよりもマダカシラの方がよろしいかと」
 ここまで話しが捻れてくれば、もうあとは関西人の性(さが)、会話を盛り上げるしかありませんね。
「もしお姉さんだったら、マダカシラで何を待つの?」と訊いてやりました。これにポッチャリ乙女子は団子鼻を天上に向け、「そうね、私の場合は……、結婚マダカシラ」と虚ろになりやんした。

 その夢心地を破るかのように、「じゃあ、私の場合は何だと思いますか?」と尋ねました。
 客からのこの唐突な質問に、プロアドバイザーはハッと我に返り、青過ぎシャドウの下にツケマ4枚、そんなびっくり瞳をバシャバシャと二度打ちし、仰ったのです。
「お客さまの場合は、ご臨終……、マダカシラ」

 怒髪天を衝く。
「タットケー!」
 私は年甲斐もなく叫んでしまいました。

 さすが旅行アドバイザーです、これに間髪入れず、「お客さまの究極の、訪ねるべき地は――タットケーです!」と答え、あとは「Have a nice trip.」(良い旅を)と英語でニッコリとしてくれました。