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超短編小説  108物語集(継続中)

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「百目鬼刑事、私、どうも腑に落ちないわ」
 現場でラリに、さらに光輝の妻の綾音を訪ね、任意の聴取を終えて本署へと戻ってきた芹凛こと芹川凛子刑事がポツリと漏らした。これに百目鬼は「熱いコーヒーでも入れてくれ」と頼んだ。

 百目鬼はわかってる、コーヒーの香りで、部下の芹凛は推理をより深化させる不思議な女刑事だと。
 そして、それは的中した。湯気が立つマグカップを差し出す芹凛、香気を押しのけて熱く語り始める。
「綾音が――同期の凛太郎に、夫の光輝を、あなたの妻のラリさんから返して欲しい、とお願いしたことを、綾音を訪ねた時に話してたでしょ。これって、あなたの妻は部下に寝取られてるわよという面当てのご注進で、凛太郎のプライドを傷つけるためだわ。これで凛太郎は腹を立て、あわよくば刃傷沙汰になることを綾音は望んでいた。つまり自分の手を汚さず、夫を殺してもらうための謀略だわ」

 こんな凄まじい推理に百目鬼はただなるほどと感心するしかない。さらに芹凛は留まることはなく……、
「光輝が使用したという、現場の包丁には血痕がなかったわ。確かにナイフで、光輝は凛太郎に刺された。だけど光輝は包丁で凛太郎を刺してない。ということは、凛太郎が光輝をナイフで殺害後、ラリがそのナイフを取り上げ、愛人を殺された恨みで、夫の凛太郎を刺殺したことにならないかしら。その後ラリが床に包丁を置き、刺し違えの偽装を図ったってことだわ」