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超短編小説  108物語集(継続中)

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「許せないわ、こんな憶測記事。ビジュアル女優、ユーユのファンの百目鬼刑事さん、まさか自殺したってことに賛同されてないでしょうね」
 芹凛こと芹川凛子刑事が朝から絡んでくる。百目鬼にとって、ユーユはいつも妖しげで、男心をくすぐってくる。たとえネット報道だとしても、自殺説が当たらずとも遠からずと思いたいところもある。

 だがここは刑事、部下の前でキリリと立ち上がり、「さっ、事件性があるかどうか調べに行くぞ」と告げ、大股で外へと向かった。芹凛は無言でその後を追い掛けるしかなかった。

 現場に入った二人、すぐに検死をし、それから屋上へと上がる。
 周囲は落下防止の金網が張り巡らされている。だが女性でも充分乗り越えられる高さ、それを確認し、遺留物をチェックする。

「えっ、濡れてるわ!」
 蘭子の靴に触れた芹凛が叫んだ。
 百目鬼はわかってる。
「時間のズレがあるぞ」と呟く百目鬼に、芹凛は頬に手を当て、「蘭子が飛び降りたのは午前6時、その時靴を脱いだのであれば濡れてないはず。ということは、4時頃のにわか雨の前に、パンプスはここに置かれたと考えられます。すなわち蘭子の飛び降り自殺に偽装の疑いがあるわ」と。

 これに百目鬼は「遺体の損傷具合から、投身地点は30階以上の高さ。マンション東面の、蘭子が落ちて行った墜落線に沿う住人を調べてくれ」と指示を飛ばした。