超短編小説 108物語集(継続中)
「私たちの再会に、乾杯!」
藍沢蘭子(あいさわらんこ)の発声で始まった小さなパーティ、それは高峰秋月(たかみねしゅうげつ)の個展会場での二人の再会が切っ掛けだった。
「蘭ちゃんじゃない、ホントお久しぶり。見に来てくれたのね、ありがとう」
幻想的な日本画を得意とする秋月、最近もてはやされてる。
「得意なイマジナティブなタッチ、ますます磨きがかかってきたようね。おめでとうございます」
蘭子は、朝靄(あさもや)に消え行く淡香色(うすこういろ)の月に、まるで目を奪われたかのように祝った。それからくるりと踵を返し、「学生時代に、私たちバーベキューしたでしょ。また山の、私の家に四人集まらない?」と誘う。
思わず懐かしさが込み上げた秋月、「もちろん寄せてもらうわ、大輝(だいき)を連れてね」と二つ返事でオーケーを出した。
こうして、高峰秋月と会社経営する夫の大輝、そしてホスト側の蘭子と夫の藍沢伊蔵(いぞう)、この二組の夫婦が集った。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊