超短編小説 108物語集(継続中)
神馬龍三は、主演になる前祝いだと訪ねてきた桜子と夕食を共にした。そしてワインを飲んだ。
しかし、桜子が睡眠薬を入れていたことを知らなかった。当然神馬は睡魔に襲われ、寝室へと。桜子はそれを見届けて、鍵を掛けず、自宅へと引き上げた。
真夜中となり、今度は桜子の愛人の奥川が侵入してきた。ドアにロックを掛け、寝室へと向かう。神馬は高鼾。それを確認し、持ち込んだ塩化カリウムの溶液を神馬に注射し、殺害した。
それからすべての窓をロックし、さらに玄関は──外から強い外力で引っ張った時に、簡単にチェーンロックが壊れるように、台座のネジを緩めた。
それらを終え、奥川は玄関横のバスルームに身を潜めた。やがて夜が明け、桜子と管理人がロープ掛けのドアを二人で力合わせて引き、入ってきた。桜子は管理人を誘導し、奥の寝室へと進んだ。その隙を狙って、奥川は洗面室から抜け出し、外へと出て行った。
こんな流れで、密室での神馬龍三の自殺が偽装されたのです、と芹凛は締めくくった。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊