超短編小説 108物語集(継続中)
あれから三年の歳月が……
今年の初夏も 相変わらず
街路樹は 激しく萌えている
そして僕たちは
別れたツリー・ラインド・アベニューで バッタリと再会した
若いサマー・グリーンの輝きの中を
あの時と同じように
僕たちは 沈黙のまま歩き続けた
そして君は ぽつりと
なぜ消えてしまったの?
君にとって僕は
スプリング・グリーンのRGB
そのレッドだったんだろ
僕は君から1メートルの距離を取った
そうじゃなかったわ
あなたは……
君はなぜか口をつぐんだ
そう あの時の 君からの言葉
レッドを抜いて グリーンとブルーだけの……
サマー・グリーンに変色したいの
それは君からの──サヨナラの告白だったはず
だけど 君はしばしの沈黙のあと
あの時のように
僕の腕に絡まりきて……
私の心は 今はもう
レッドが混ざらない RGB 0 153 68 のサマー・グリーンに なってるよ
だけど もうすぐ初夏は終わり 真夏がくるでしょ
だから RGB 0 123 187 の ── 夏の紺碧色へと
私の心
さらに その青の 深みを増したいの
それって
どんな風にしたら 紺碧色になれるの?
僕は君に向き合った
それはね
サマー・グリーンに
もっともっとブルーを増やしていけば
私の心は
もっとピュアーな ── 紺碧色になれるわ
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊