超短編小説 108物語集(継続中)
されどだ、ここへきてヒラメキに愛人ができた。
なぜ?
夫婦間にちょっとした隙間ができたのだろうか? ソラにはその理由がわからない。
いずれにしても裏切られたことに間違いない。とにかく口惜しい。
これからの生活、ヒラメキとやって行けるのだろうか?
こんな迷路に迷い込んでしまったソラ、だが結論付けるのにそう時間はかからなかった。ヒラメキと別れようと決心したのだった。
それにしても腹が立つ。このまま黙って終わらせるなんて、ソラのプライドが許さない。ケイタイを手にした。
「お母さん、ヒラメキとはもう暮らして行けなくなったわ。そちらに帰りたいの」
「そうしなさい。お父さんも早く戻って来いと言ってるよ。三日後の新月の夜に迎えに行くから」
さすが両親、すべてお見通しだ。ソラはなんとなくホッとする。
秋の夜空に細い月が浮かんだ。星たちがキラキラと煌めいている。そんな星降る夜に、ソラは小高い山へと登った。
ソラが夜景に見入っていると、頭上に一艘の宇宙船が音もなく現れた。そしてそこから白い光線が発せられ、ソラはそれに包み込まれ、ユラユラと船へと吸い込まれて行った。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊