超短編小説 108物語集(継続中)
コートのポケットに左手を入れ、右手で吊革を握ってる。ぶら下がったような瑛太、混んだ電車の揺れに身を任せている。
毎朝繰り返される通勤地獄、だが慣れてしまえば気怠くもあり、夜の続きか睡魔が襲ってくる。しかし、勤務先の駅までにはしっかりと目覚めなければならない。しかも心地よくだ。
そのためには瑛太なりの拘りがある。それは七輛目の後方部、奥から三つ目の吊革辺りに自分のスペースを確保すること。そして周りには馴染みの顔ぶれが揃っていること。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊