超短編小説 108物語集(継続中)
一瞬に会場は暗くなった。そして静まりかえった海底が映し出された。
ロボットから放たれる白い光線が闇の中を飛ぶ。そして、その先に黒い鉄壁が。
さらに光線は上方へと伸びて行き、スポットの輝きの中に文字が浮き出した。
−−− 戦艦大和 −−−、力強い表記がそこにあったのだ。
これに、今まで騒々しかった記者会見場はシーンと静まりかえった。あの悪夢の時から重ねた幾年月、その重い歴史を振り返れば、もう言葉を発する者は誰もいない。
そして、そこにあったのは……、ただただ手を合わせ、心からの黙祷(もくとう)だけだった。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊