超短編小説 108物語集(継続中)
単身赴任中の北林幸介、パソコンの前でコンビニ弁当を突っつきながらふと思い出した。それは幼い頃に祖父がポロリと漏らした『うまんまの箸』のこと。一体それはどんなものだろうか?
そこで、ネット検索すると……。
うまんまの箸は香木うまんまの木から作られ、それを使うとすべての食べ物が美味しいと感じられる。
材料となるうまんまの木は森深くに育つ落葉樹。初夏に可憐な花を咲かせ、秋には真っ赤に色づく。木の実の栄養価は高い。だが、ひどく渋い。
リスなどの森の小動物たちは冬に備え、この実を好んで食べる。しかし、なぜ吐き出したくなるほどの実を摂取できるのか? 不思議だ。
だがここにヒントがある。
彼らはうまんまの木のうろ穴に潜り込み、それらを木の皮と共に囓る。
そんな習性からすると、つまり、うまんまの木を食感しながら食べれば、その渋さは消え、美味に変わるからだと推察される。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊