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荒唐無稽な話に思えるだろうか?

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「・・・催眠術にかけられてしまって
気が付いたらここに居まして
後のまつりですわ
早くに気が付けば良かったんだけど
そして認知症にされてしまったんですよ
呪われているんですよ
・・・・・そりゃぁ、〇〇ですよ

だけどねぇ そんな事を企んでも私には見通す力が有ってねぇ

私は、呪うなんてそんな事しやしません
呪った方は・・・ほれ、なんだったっけ・・・
ブーメラン あれですよ
呪った分必ずそっちへ戻っていくんですよ ははは・・・」

 父親が誰かと電話で話しているのが、娘に聞こえる
 ディ・サービスの担当者から聞かされていたけれど
 事実だった事に、驚くよりも意味の判らない事をとくとくと
 何でもないように語る父親に不気味さを感じて身震いした

 50年来、時として逢う事も有った
 電話も数年に1~2回、かける事も有った
 
 この冬
「一緒にくらせないか」と電話が有った時

 親孝行の真似事でも出来たら良い、と引き受けた娘
 一度、顔を見に行こうと出かけて、余りの暮らしのすざまじさに
 嘔吐しそうになった

 窓を開け放った形跡の無い、埃と古い黴た匂い
 これは何だ というかさついた匂い
 見渡して、点々と、所に拠っては黒い塊様の染み付いた汚れ
 ゴキブリの糞で有ったことを後に知る
 言葉で形容しきれない塵のような住まいに
 哀れを感じた事を、娘は微かだけれど悔いる

 理解できない変容ぶりに戸惑いと地の底に押し込まれていくような
 混沌とした感情

「黙って俺の言うことを聞いておれば良いんだ」

 とかみつくように吐き出すように言う父親にあきれ果て
 理論立てて言ってみても聞く耳は持っていない
 ディ・サービスの担当者は言った
「我儘で自分勝手で上から目線で、自分が一番でいたいようだ」
 さもありなん

 彼女は娘の心身を気遣う
「貴女が病んではならない・・・」

 何時までに何をすれば良いのか娘は呆然と考え込む
 友人達は施設、或いは別居 をと言う
 今直ぐ離れたい としみじみ思う娘
 そうはいかない事は充分に判っている
 一つ一つ準備を重ねるしかない事を覚悟しよう、と眠れない早朝に
 結論を出した