自作お題小説『色』
(色)緑色の自転車
「おはよー。」
「おはよー。」
朝の登校風景。
同じクラスの友人に会って、何気ない挨拶を交わす。
ガシャンと音を鳴らして自転車のスタンドを立てる。
ちらっと辺りを見回して、見つけた緑色の自転車。
(今日は早いな…。)
そんな事を思って、口元が緩む。
「どうしたの?一人でニヤニヤして?」
隣に自転車を停めた友人が、顔を覗き込んでくる。
「な…何でもないよ。」
焦って自転車のカゴから鞄を掴み取る。
他愛ない会話をしながら、クラスへ向かう。
「おはよー。」
隣をすれ違ったあいつ。
目線を向けずに、それだけ言った。
「お〜っす。」
向こうもそれだけ言って通り過ぎていった。
こんな些細な事がうれしい。
「じゃぁね〜。」
「うん、バイバーイ。」
部活帰り。
自転車の少なく為った駐輪場。
(あれ…?まだいる。)
ある一角にぽつりと停まった緑色の自転車。
その緑色に背を向けて、自分の自転車にまたがる。
「おぅ。今帰りか?」
後ろから急にした声に肩がビクリと揺れて…
「そ…そっちこそ…。」
照れ隠し。
少し強い口調。
「俺は…鍵当番。」
「へーそうなんだ…。」
微妙な沈黙。
出来た間。
「一緒に帰ろうか?」
「えっ?」
その声にカァッと顔が赤くなる。
夕日が…この紅を隠してくれますように…
「ちょっと待ってて。」
あなたはそう言って、緑色の自転車に向かって行く。
そんなあなたを、黙って見つめる。
「お待たせっ。」
緑色にまたがったあなた。
思わずじっと見つめてしまって。
「ん?」
あなたは不思議そうな顔をした後、ニカッと歯を見せて笑った。
「カッコイイだろ?俺の愛車。」
「あんまし見ない色だけどね…。」
咄嗟に付いた悪態。
「でも判りやすいだろ?」
ニヤニヤ笑ったあなたの顔。
もしかして…
バレてますか?
あなたを探しているのを…
毎日…
その緑色を探しているのを…
「派手すぎて、目には付くね。」
意地で付いた悪態。
「まぁ…そうゆう事にしといてやるよ。」
貴方が笑う…
緑色の自転車にまたがって…
終わり 08/07/01