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君に秘法をおしえよう

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職業を目的にしなければ何したっていいんだ。まず、自分の本質だよ。何が好きか、何ならずっとやっていられるか、それを考えるほうが先だ」


「うーーん、そう言われるとオレには何もない気がする。ゲームもアニメもそんな好きじゃないし、漫画は読むの好きだけど描くのはなぁ…… あ、科学は好きだけど、研究者になるほど好き、とは言えないし……剣道だけかな、唯一、続いているのって」

「剣道のいいとこってどこ?」

「えー?」

 単純に面白いから、ってのじゃ、この場合許してくれないだろうな。

「うーーーーーん。 無意識の感覚? を発揮できるとこかなぁ? ほら、勝負って一瞬で決まるだろ? 反応の速さだよね。いちいち考えてなんていられない。技を練習で一生懸命、無意識に沁み込ませて、そんで、実戦で使えたら……面白いよね?」

「面白いよ」

 剣道のことになると饒舌になるオレに、正宗は笑いながら答えた。


「そんでもって、空気が切れる感じとか、時々、相手がゆっくり見えたりとか、異次元ぽいんだよね。……そんな感覚になる時ない?」

「あるよ、もちろん。……相手がいるってのもいいけどね。剣道はひとりで形をやることも出来るけど、やっぱり相手がいるから。負けると自分に足りない部分が見えるっていうか……」

「それ、分かる。相手はある意味、鏡なんだ。ひとりじゃ気付かなかった隙のある部分、弱点だった部分に打ち込んでくるから。……そう考えると、なんか、深いなぁ」

 考えてもみなかった。剣道のことをこんなに考えたのってはじめてだ。

 自分は何者なのか、というのに突き当たっていく。それは、他者がいないと分かりえないもの、負けないと分からないもの。人生の障害も同じように感じた。自分の弱点に気付かせてくれるものなのかも。


「うん、確かにね。大きな視点でみれば、その通りなんだ。ただ、正しい方向で人生を歩き出しているときにあう抵抗は、上昇のための反作用点になるんだけど、不幸うずまき拡大中の時の障害は自分を痛めつけるばっかりで、鏡になんて出来ないことが多い。ほら、弱り目にたたり目って言うじゃない。いちど、不幸うずまきは、止めなくちゃいけないんだ」

「不幸うずまきを拡大しないためには、レイキなんかで自分のエネルギーを整えて、これ以上不幸を呼びこまないこと。停止・逆回転させるためには好きなことをすること、だろ?」

「うん……言うのは簡単なんだよね……」
 正宗は、困ったように頭を抱え込んで下を向くと大きくため息をついた。

作品名:君に秘法をおしえよう 作家名:尾崎チホ