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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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金木犀の薫り

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必要なお金であれば


この若い女が生活のため、生きていくためと言おうか、身体を売ることが僕は仕方のない事なのかもしれないと思う。僕自身がそれと同じことを経験していた、自分の意志に反する絵を描いては売ったのだ。それはパン画と呼ばれていた。考えようによっては体を売ることよりも画家には辛い事であった。画商の意向のままに描いた。
僕の絵に対する感性は失われて行った。
そのおかげで母のC型肝炎は奇跡的に回復した。
僕はそれで良いと思うようになった。
僕は女の事をマリアと呼びたいと思っていた。どこか愛おしい。
マリアの体の何時も開いているドアを僕の手で閉じてやりたいと思う。
僕はゴンのリードを持つとゴンは喜んでくれた。
「山田が本当に仲間を連れてきたらどうするつもりだったの」
「警察に電話するよ」
「私も絵を習いたいな」
「教えたいが今は駄目だよ」
「絵描きさんはいいよね、呑気そうだしさ」
「君の思うほどではないよ」
「でも好きな仕事でしょう」
「それはそうだよ」
「スカウトされてモデルになったけれど、楽しくない」
「辞めたらいい。生活は僕がみる」
「結婚してくれるの」
「それより、叔父さんだから責任感じたのさ」
僕はこの時またパン画を描こうと考えていた。
[今晩泊ってくれる」
「仕事あるから無理」
「ご飯食べて」
「喜んで」
「たくさんお礼するから」
「簡単なものでいいよ」
僕は夕食を食べればそのまま泊ることになりそうだと思ったが、もう断れないと感じた。


まったく前と同じことだと感じた。
ゴンが顔を舐めている。僕はそう感じた。しかしゴンではなかった。
僕の顔の前にいるのはマリアであった。
「抱いて」
マリアの言葉ははっきりしていた。
僕は何時間このベットにいたのだろうか。部屋には暖房がかけられていた。
かすかにシャワーを浴びた事が思い出された。
僕は下着であった。マリアの体には何も纏ってない。
乳首がツンと立ちピンク色をしていた。
芸大の頃初めて裸体を描いた時を思い出した。
女性の体の美しさに興奮したことを・・いまの僕はその時と同じだと感じた。
モデルの様な美しい乳房に触れる事も出来なかった。
「汚れた体では抱けないの」
マリアの言葉は僕には余りにも思いがけないものであった。
僕がこのままマリアの体に触れなければ、マリアの言葉を肯定したことになってしまう。
ベットの脇で寝ころんでいたゴンがうなるように声を出した。
マリアはゴンの方に向いた僕の顔を両手で自分の顔の前に戻した。
「拒まれると余計にしたい」
「そんな訳じゃないよ」
「病気なんかないよ」
「解っている」
僕はどうしたらいいのだ。
いままでなら1杯のアルコールを飲むように、いとも簡単に体を寄せあっただろう。
そして酔いがさめる様に別れただろう。
「紙と鉛筆を貸してほしい」
「こんな時に何考えてる」
「君を描きたい」
「このほうが楽しいのに」
マリアは薄手のガウンをはおりベットを出た。
「ゴンの脇に座って、10分でいい」
時計を見ると午前1時を少し過ぎていた。
マリアの事を何も知らなければとてもきれいなお嬢様に見える。
僕はそのつもりで描いた。
「今夜はこれで帰る」
「駄目そんなこと」
「約束した君の面倒は見るよ。とりあえず月に15万円。銀行に振り込む」
「そんな必要ない」
「通帳見せてくれないか」
「覚えているわよ」
マリアは銀行と口座番号を言った。
僕はスケッチした紙の端にメモをした。
僕はこのまま去ったのではと思いドイツ製の時計を置いていこうと思った。
アルスの手造りで金のマット仕様だ。10年前で90万円前後で買ったものだ。

作品名:金木犀の薫り 作家名:吉葉ひろし