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そうま・けんじ
そうま・けんじ
novelistID. 41957
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当たり前じゃないか。【文】

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【京都市 三条大橋】
ある日、鴨川は三条大橋のたもとで腰を下ろしていると、ぼくは片足をなくした鳩に出会った。

"ぴょこぴょこ"と飛ぶとも歩くのともつかないその動作。えさをついばむにもにも"よたよた"と転倒をくりかえすその姿に、ぼくはなんとも彼が不憫に思え、手に持っていた菓子を与えようと手をのばした。

ところがどうだろう、彼は菓子になど目もくれず、鳩はどこへともなく飛んでいってしまったのだ。

意外な思をした。

歩くことさえままならないのであれば、餌をうまく取ることができず、さぞ腹を空かし餌に飛びついてくるに違いないと思っていたからだ。

片足ながら優雅に飛ぶその姿に、ぼくは気がづく。

ぼくが人間の目線で勝手に不憫に思い、善意ともつかない"ただなんとなく"に等しい、勝手な善意を彼に押しつけてしまったにすぎないことを、彼の余りにも平然と、どこか爽やかすら感じさせる、その飛ぶ姿がそう感じさせてくれた。

人は、相手が悲しい思いをすればするほど、苦しければ苦しいほど、つい自分との比較を、あるいは相手の立場になって考えがちである。それは決して意味のないことではない。

しかし、どんなに哀れんだとしても、その立場を代わってあげられることなどできない。自分というカタチを変えられることなど、できるわけもないということを、相手を思いやる気持ちと同じように、忘れてはならないのだ。

彼は己の悲運に対し、いくらも卑屈になってはいない。ただ鳩であり続けている。

つまり、彼が鳩であり続ける以上、何も無くしてはいないということだ。

いま思うと、「世の中は公平ではない、でもそれがなんだ。当たり前じゃないか」とぼくを笑ってくてたのではないかと、感じている 。

鳩にしてみれば片足だから「いい」「悪い」の話ではない。ただの"事実"であてって、それ以上でもそれ以下でもないとういことを、教えてもらったきがするのだ。

文 (そうま・けんじ)