ヴェリタリスクエスト
そもそも俺は、いつも通りの日常を送るはずで、当然こんなことになるなんて、
思っていなかった。きっかけは些細なことだ。自分の居場所に帰ってくるなり、
ここは安全だなどと俺が油断していたせいで、大切な人たちと生き別れる事に……
そして、目を開けた。目の前に広がるのは知らない世界。それが飛ばされた証拠でもあった。
「キャーーーー!」
森の中で人の悲鳴が聞こえたのには驚いたが、すぐさま悲鳴のする方向へ走った。
「あれか」
犬型モンスター【ウルフ】が今にも女の子に襲い掛かろうとしていた。俺は武器を
抜いて、殺意を放ち、斬りかかった。殺気に気が付いたウルフの目が俺に向くなり牙をむく。
そんなもの俺には通用しない。ウルフの頭めがけて大剣を振り下ろす。
目の前に醜い肉片を残して戦闘は終了した。俺は、無残にも死骸の中から核を取り出すなり安心した。これを知っている。これが普段の日常のはずだったのだ。
取り残された女の子は武器を持っていながらもこういった事に慣れてないのか、怯えていた。俺を恐れていたのかもしれない。女の子に近づき声をかけてみる。
「大丈夫か?」
「えっ?あ、はい。もう大丈夫です。助けてくれてありがとうございます。
私は、リ……リーシャです。リーシャと呼んでください。」
ためらいながら名乗ったように思える。とりあえず俺も名乗っとくか。
「ああ、俺はアルバート。アルと呼んでくれ」
相手が名乗ったので俺は名乗ったがこれ以上は必要ないだろう。
「……ところで、リーシャはどうしてこんな所にいるんだ?」
「え~と、それは……散歩です」
(今な危険な森を一人で散歩か?まあ、いい。とりあえず話を合わせておくか)
「俺も散歩をしていたが、歩いていた道から外れてこんな場所に来て、
迷ってしまった。すまないが、この森からの出方わかるか?」
「じゃあ、ついてきて」
そういってリーシャは森の外へと歩き始めた。それに俺は難なく森の外へ出で
来ることが出来たのだが、
「それじゃあ、さよなら」
と別れの挨拶をした時、リーシャが
「待って!お礼をしたいので私の家まで来てください」
と言われてしばらくつかまってしまうのだった。
第二戦「出会いの行き先」
作品名:ヴェリタリスクエスト 作家名:東雲タツキ