アリさんとキリギリスさん
あるところに、働き者のアリさんと怠け者のキリギリスさんがいました。アリさんは、毎日毎日せっせと働きました。キリギリスさんは、それを横目に歌を歌って遊んでばかりで、「あとで後悔しても知らないぞ」とアリさんに言われても、「真面目に働くなんて馬鹿らしい」とそしらぬ顔をするだけでした。アリさんは呆れてものも言えませんでした。
やがて冬になり、アリさんは仲間たちと一緒に食糧を蓄えた巣に籠もりました。しばらくして、アリさんはふと思いました。
「キリギリスの奴は今頃どうしているだろうか。もしかしたら、もう餓死しているかもしれないな。しかし、可哀想だが、自業自得だな」
そして春になり、アリさんは久しぶりに巣から地上へと出ました。その後、元気そうなキリギリスさんと出会ったので驚いて訊ねました。
「遊んでばかりだったのに、一体どうやって冬を乗り越えたんだ?」
「なぁに、簡単なことさ。道で歌を歌っていたら、芸能界にスカウトされて歌手デビューしたんだよ。今は好きな歌を歌っているだけで、話題の新人歌手として大儲けってわけさ。な? 真面目に働くなんて馬鹿らしいだろ?」
作品名:アリさんとキリギリスさん 作家名:タチバナ