不平等な世界―水泳―
顔面偏差値について問われれば何も答えることはできない。
しかしながら、高校時代、俺もあいつも所属していた水泳部の中でのトップは俺だった。
それなのに、俺が重要な試合に風邪で出られなくなったせいで…。
泣きたい。しかし、ここは最後まで言って楽になりたい。
ピンチヒッターのあいつが審査員の目に留まり、スカウトされる。
そのルックスと泳ぎで…、やめたやめた、あいつのことを考えるなど、ばかばかしい。
頭を大きく振って思考を途切れさせようとするロートンでバイト中の浪人生。それはまさしく俺のことだ。
その頃、とあるプールの水中で…
はーくちゅん!!
水を吸い込みすぎて思わず咳き込む男が首をかしげていた。
作品名:不平等な世界―水泳― 作家名:清水 蘭