詩集・空への伝言
桜
君、出
この腕のなかに
穏やかなる風の中に
ひとひらの
夢にまどろみ
君、出
清廉なる土の
豊かなる微笑の中に
ひとひらの
色に佇み
君、出
艶やかなる樹皮の
広がりゆく時の間にまに
しなやかな枝を広げ
何食わぬ顔をし
絹のように美しき
しろき花弁を震わせて
芽吹きの前
それはただ
大いなる生命の躍動を告げ
ありふれずに確かなるめぐりのひとつを
待つものに
つげる予兆
花よ
ちいさき絹のようなしろき花よ
なれ告げるものは躍動か
儚くはない
儚くはない
そのような強きものに
儚きものはひとつもない
ちいさき絹のようなしろき花よ
なれ散りゆくは強き鼓動よ
君、出
この大きな腕より
弾け出したるいのちの息吹よ
飛び散れ
飛び散れ
空気に
光に
大地に
水に
君、出
桜花よりいでし若きちからよ