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はいいろのゆび

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Episode3



タタタタ…タタタタ…
日がすっかりのぼり、朝日の中をポチくんが庭で元気に走りまわっている。

キュワンッ、キュワンッ!

ポチくんの鳴き声に視線を向けると、庭の真ん中に黄色いタンポポが咲いているのをみつけ、
クスッと笑う。今まで色彩なんてなかったモノクロの庭は、昨日一日で緑でいっぱいに
なっていた。
いつもとは違う庭の様子にポチくんも楽しそうだ。

結局、ポチくんを連れて行ってもいいこと、定期的に店に帰ってもいいことを条件に
住み込みで働くことを承諾した菊だったが、詳しい仕事内容は聞いていない。

「秘書兼雑用…と言ってましたから、書類整理みたいなものでしょう」
「おーい、菊ーいるか?」

玄関の方で声がした。準備した荷物を持って玄関に向かう。
木でできた扉をガラガラと開けると、そこには昨日と寸分変わらないアーサーの姿があった。
逆光で、朝日を背負ったアーサーの髪はやはり綺麗で王冠のようだ。

「どうした?」
「いえ、こうして貴方を玄関でお迎えするのは初めてだなぁと思いまして。」
「確かにそうだな。今までは結構、俺が強引に上がっちまってたし。
す、すまなかったな。」
「いえ、いいんです。おかげで、素敵なものを拝見出来ましたし。」
「そ、そうか。車で行くんだが、もう準備はできたか?」
「はい。あ、そうだ。ポチくーん!」

菊が呼ぶとポチくんはトタトタと廊下を走って菊の足元まで来た。
荷物はアーサーが積んでくれたので、ポチくんを抱き上げて助手席に乗る。

「荷物、ありがとうございます。」
「気にしなくていい。それより、その犬…ポチ、だったっけか?
賢い犬だな。」
「はい。ポチくんは私の親友でいつも一緒にいるんです。
昔、兄が私のために小さな庭を作ってくださいました。こんな“ゆび”ですから、
なかなか花が咲いてくれなくて…。」



作品名:はいいろのゆび 作家名:Sajyun