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風香の手帖

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五話 「綾瀬家へ」



「風香お姉ちゃん! よつばちゃんのお父さんと結婚するの!?」
「え゛!? 何でそれを!?」
「やっぱりするんだ!」
「あっ」
「風香、ちょっとこっちにいらっしゃい」
風香の母が台所に呼ぶ。
「さっきよつばちゃんと恵那が遊んでいるとき、あんたが小岩井さんのお嫁さんになるってよつばちゃんが言ってたのよ。冗談だと思っていたけど、今のあんたの様子じゃ本当みたいじゃない。私に詳しく説明してちょうだい」
風香は観念して一部始終を話した。
「なんだ。お母さんにバレちゃったの?」
二階から降りてきたあさぎが聞く。
「あさぎ、あんたは知ってたの?」
「うん、風香からデートの相談とかされてたから、付き合ってたのは知ってた」
「それにしても風香、あんたと小岩井さんの間でそこまで話がまとまっているとは思わなかったわ」
「小岩井さんがいろいろ考えてくれてたみたいで、二人の間の話自体はすんなり決まったの」
「あんたが”家出”したときに言ってた冗談が本当になるなんて。ああ、お父さんに何て言おう」
風香の母は頭を抱えている。
「前に風香が失恋したときも、お父さん気が動転してたもんねえ」
「とにかくお父さんに話す前にもう一度聞いておきたいから、小岩井さんとよく相談しておいて。特に大学進学のこととか」
「はい」
風香はもう一度小岩井に会いに行くことにした。

 玄関に行くと、よつばが申し訳なさそうな顔で立っている。
「ふーかおこられた?」
「ううん、怒られてないよ」
「よつばがしゃべったから……」
「大丈夫。よつばちゃんのせいじゃないからね」
風香は隣へ出かけていった。

 小岩井家のチャイムを鳴らし、中へ入る。
「小岩井さーん」
風香が呼ぶと台所にいた小岩井が出てくる。
「あれ? 風香ちゃんどうしたの?」
「小岩井さん、全部バレちゃった……」
「ええ!?」
風香は母親と話したことを説明した。
「そうか。それじゃすぐ君のお母さんのところに行かなきゃならないな」
「ごめんなさい。小岩井さんバレる前に行きたいって言ってたのに」
「いや、風香ちゃんのせいじゃないよ。それに悪いことをしてるわけじゃない。堂々と話しに行こう」
「はい」

 風香と小岩井は綾瀬家へ入っていった。
「お母さーん。小岩井さんが来てくれたー」
「まあまあ。こんなに早く来てくれるとは思わなかったわ。風香、小岩井さんを居間にお通しして」
「おじゃまします」
「あさぎ、小岩井さんにお茶お願い」
「うん、今やってる」
小岩井が居間に座ると、風香は小岩井の隣にちょこんと座る。
小岩井は風香の母に一通り説明をした。

「話はわかったわ。さっき風香からも大体のことは聞いたし。ところで、小岩井さん。立ち入った話で申し訳ないけれど、風香の大学進学って実際どうなの? よつばちゃんも来年小学校だし、失礼だけど風香の入学金や授業料も払ってやっていけるの?」
「正直言って楽ではないです。でも今考えている範囲ではやっていけると思っています」
「私もバイトするから!」
「二人がそういうなら、私の方は言うことないけどねえ」
「じゃあお母さんは賛成してくれるの!?」
「あんたが小岩井さんとよつばちゃんのお世話をしにうれしそうにお隣へ行く姿を見ると、そこまで好きな人との仲を裂くのも気が引けるわね」
風香は赤くなりうつむいた。

「小岩井さんは、風香のことどう思ってるの?」
「年の差もあるし、最初は風香ちゃんのことは妹として見ていました。でも今は彼女なしの人生は考えられません」
「小岩井さん……」
「わかった、わかった。こっちが熱くなっちゃうわ。とりあえず私の方からお父さんに話しておくから、また改めて相談しましょう」
「よろしくお願いします」

「風香ちゃん、俺は帰るけど、また明日話をしようか」
「はい!」
「とーちゃん」
「よつば、今日はもう帰るぞ」
「うん」
「おじゃましました」
小岩井とよつばは帰っていった。
「いつもはとぼけた顔してるけど、小岩井さんもやるときはやるじゃない。でも風香も愛されてるわねぇ。『彼女なしでの人生は考えられない』なんて言われちゃって」
「うん、うれしかった」

 風香とあさぎが話しているところに、恵那がやってきた。
「風香お姉ちゃんがよつばちゃんのお父さんと結婚したら、よつばちゃんのお父さんは私の何になるの?」
「義理のお兄さんになるわね」
「お兄さんなんだ。おじさんかと思った。じゃあ私はよつばちゃんのお姉さん?」
「恵那はよつばちゃんの叔母さんよ。うちのお父さんとお母さんは、よつばちゃんのおじいさんとおばあさん」
「私まだ小学生なのに、よつばちゃんのおばさんなのー!?」
恵那はショックを受けたようである。

 そして次の休日が来た。
今日は風香の両親へ改めてあいさつに行く日である。
風香は小岩井の支度の手伝いに、小岩井家に来ていた。
よつばは既に綾瀬家へ行っている。
「風香ちゃん、俺無事に帰ってこれるかなぁ」
「大丈夫ですよ。お父さん私に甘いから。あ、ネクタイ曲がってる」
風香はネクタイを直してやる。
そして目を閉じ、短いキス。
「落ち着きました?」
「うん、頑張るぞ!」

 二人は綾瀬家に向かい、中へ呼ばれる。
客間で待っていると、両親が部屋に現れた。
小岩井が立ち上がり深々と頭を下げる。
風香は隣の小岩井を見てまねをした。
小岩井は改めて、結婚を前提に付き合っていることのあいさつと、今後のこと、特に風香が卒業したら籍を入れたいと思っていることなどについて説明した。
じっと聞いていた父親は、考え込んでいるのか黙っている。
小岩井と風香は沈黙の中で、緊張が高まっていく。

 すると父親が口を開いた。
「小岩井君、君はこんにゃく屋だそうだが、何でも今までにない画期的なこんにゃくを研究しているそうだね」
「……は?」
「完成したら、今までのこんにゃくの常識を変えるようなものだそうじゃないか。そういう人がお隣に、いや身内になってくれるのは実に素晴らしい。はっはっは」
「……はい?」
「風香の結婚も少々早すぎる気もするが、君のような大人がついていてくれれば大丈夫だろう。これからも風香のことをよろしく頼むよ」
風香の父親は小岩井と固く握手をする。
小岩井はわけがわからないまま、とりあえず言葉を返す。
「はい、ありがとうございます! 風香さんは必ず幸せにいたします!」
作品名:風香の手帖 作家名:malta