ブルーシートに包まれて
珍しく雪が積もったからね。
私が外を眺めてはしゃいでたら、
あなたは「そんなに雪が好きなの?」って笑ってた。
見ているだけじゃ物足りなくて「雪の中を歩きたい」って言う私へ、
あなたは残念そうに首を振って抱きしめてくれた。
日が沈んで外が輝きを減らしたころ、
「車に乗ろう」って、一緒に外へ出た。
一人で出かけることが苦手な私を、
あなたはよく連れ出してくれたよね。
部屋からでると、靴に泥が染みついた。
もう、人がいるところの雪はみんな溶けている。
見える景色は醜かった。
雪が溶けて土交じりになって、さみしくなっってしまったの。
私はそれを見ているのが辛くて、黙ってしまった。
車に揺られながら、涙がひとつ落ちたて染みになった。
あなたが、「目を閉じていていいよ」って言ってくれたから、
次に目を開けたときは、外は白色の世界だった。
二人で窓辺から見た景色よりも、ずっとずっと白だった。
車内から見える景色は、あなたと白だけだった。
「君は色が白いから、青い服が似合うね」って、
素敵な服を贈ってくれた。
嬉しくて、言葉も出なかった。
なんとかほほ笑んだ私を、あなたは両手で包んでくれた。
声が出なくて、ただ頷くしかできなかったけれど、
私の首を触って、あなたは「綺麗だ」って。
長く長く、いつまでも見つめあったね。
苦しさなどない。
私が崩れてしまうと、あなたはそっと支えてくれた。
最後に見たあなたは、素敵に笑っていた。
雪が好きな私に、あなたがくれたプレゼント。
今年の雪はもう積もらないってあなたはつぶやいたね。
真っ白な景色に包まれた私。
私は今、白い世界にただの一点の青となっている。
二人で過ごしたこの冬を、二人で見た雪を、忘れはしない。
私は、幸せだった。
来年は、真白の雪に二人の足跡を残そうよ。
今度は一緒に並んで歩こう。
私が、臆病なあなたを連れ出してあげるから。
作品名:ブルーシートに包まれて 作家名:佐々川紗和