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小さな叫び

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朝の出来事

会社へ向かい駐車場に車を止めて事務所までの5分の道のり事
この5分は 私にとって仕事へ戦闘モードをONにする貴重な時間

ゆっくりと事務所まで向かう道のりを歩く

駅に近い商店街の道
 
酒屋さんと花屋さんの間にある小さな空地に差しかかったところで
私は小さな叫び声を聞いた

『にぁ~にぁ~』と甲高く啼く声….

どこ?と


私は 声鳴る方へ 辺りをきょろきょろと見渡した

のに   

その姿が見当たらない

1台の車が止まっていた 

その小さな叫びは耳を澄ませばそこから聞こえた

車の中を覗いた 姿は見当たらない でも聞こえるのはここなのだ

しゃがみ込み車の下を見た 姿は見当たらないが 叫びはそこからだった

『おい そこにいるのか?子猫さん』と声をかける

叫び声は止んだ

『おい そこにいるのか?』もう一度聞き直す 

私はお馬鹿か 答えるはずもない…相手は猫様である

私の言葉など解るはずもないし ましてや警戒心の方が強いだろが と

思いつつしゃがみ込み車の下を気にしていた


『何してるの 遅刻するわよ』聞き覚えのある声

振り返れば自転車をヒイコラと漕いで行くわか社の理事長様

『おはようございます』とあいさつする私
『早く歩きなさい』
『はぁい』と子猫さんを気にしつつも理事長様の後について走り出した





事務所について掃除をしながら 何をしていたのかと聞かれて

あのですね…といきさつを話した


理事長様いわく『懲りないわね…』

もう一人は『その手を見て見なさいよ 大変な思いをしたでしょ』


言われて両手の甲を見る

2か月前に怪我した猫を助けてかまれた跡が点々と無数にまだしっかりと残っている
もうこの傷はシミになって残るだろうな…
白くきれいな手が羨ましい…なんてことまで思わせた



でもね あの小さな叫びを聞いてしまったんだもの ほっとけないでしょ...

『まぁ今回は猫だって怪我してたわけじゃないんだし』
『そうですよね』

と言いつつ仕事をしていても頭の隅の隅では少しだけわずかにあの声が残っていた


その後も私は 銀行へ行く途中…夕弁当の配達へ行く時 

あの車の下をやはり何度と覗いてみた でも

もうあの小さな叫びは聞こえなかった

ほっとした様な 気が抜けたような 

だけど 私はきっと また明日もあの車の下を覗いたりするんだろうなっと

自分の姿を想像していた
作品名:小さな叫び 作家名:蒼井月