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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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トイレのかみさま

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トイレのかみさま

御手洗清は下痢気味であった。駅で用を足したのに、会社の玄関口でもよおして来た。
後三分しかない。このままトイレに入れば遅刻だ。こんな時に限って、エレベーターが降りて来ない。階段を上れば漏れそうだ。
やっと降りて来たエレベーター。がたんと振動して上がり出した。
静に頼む。御手洗は心のなかで言った。五階までの時間の長いこと。タイムカードを押した。
セーフ。今度はトイレだ。
幸いに開いていた。それもそうだろう。朝礼の時間だ。
便座に座った途端にこちらもセーフ。
思わずトイレの神様をハミングしていた。
そしてペーパーを取ろうとしたら、おいおい、ロールがない。予備もないぞ。
ウオッシュレットはついてない。本当についてない。
おまけにテッシュも持ってない。あるのはハンカチだけだ。
彼女に先月誕生祝いでプレゼントされたものだ。それでうんこを拭く事も出来ないな。
朝礼が終わるのは一五分後だ。
御手洗清。おてあらいと呼ばれたっけ。いじめられたっけ。
あぁ早くかみさまが来て欲しい。
トイレの神様。トイレのかみさま。
作品名:トイレのかみさま 作家名:吉葉ひろし