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或る手紙

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実家のものを整理してくれている妹が
「たくさんの手紙があったよ」と箱に入った手紙を見せてくれた。


小、中、高校のときのペンフレンドの手紙のほかに
青春時代の甘酸っぱい想い出が含んだ手紙もあった。
こんな手紙が残っていたなんて・・・恥ずかしい。
手紙を出した人たちだって、忘却の彼方のはずだろう。
破り捨てなければ、いやいや今はシュレッダーということね。


そんな手紙の中に差出人が中学の同級生の男の子の名前があった。
彼をK君としましょう。K君は不良っぽい男の子だった。
そんなK君から手紙をもらったことさえすっかり忘れていた私
当時のわたしは視野の狭い女の子で
悪ふざけしている子やチャラチャラしている子に厳しく
彼らを覚めた目で見ていたと思う。


K君の手紙には
「僕は陽気で明るい性格だけど おまえは暗かったよな」と書かれていた。
私からすれば「あなたは校則違反ばかりしていて不良だったよね」と言いたいような。
でもそんなことを書いたとは思えないし、返信したのかさえ覚えていない。
しかし 生真面目な私は返事は書いていると思う。

高校時代に父をを突然亡くしたわたしに
同級生の彼がわざわざ手紙をくれたのだ。
考えてみたら、なんて優しい男の子だったのだろう。
K君のことを私はあまり好きじゃなかった。
私の言うことに反論ばかりしていたし、ツッパっている人は苦手だった。
そんなK君が手紙をくれたのだから私はかなりびっくりしたと思う。
高校も違っていたので、通学で会うこともなかったK君。

中学時代のクラス委員の男の子たちが代表で自宅に来てくれた。
悲しんでいるであろう私を励ましに・・・
K君はその男の子たちから私の様子を聞いて手紙を書いたらしい。
「もっと悲しんでいると思っていたら、けっこうしっかりしているんだ」
「若くてきれいなお母さんがいるのだから、一緒に力強く生きてください」
「何かあったら話くらいは聴けるから」とあった。
おお~~すごい!こんなことを高校一年生が書けるんだ。

委員長の男の子には面と向かって「何でも相談に乗るよ」と言われたのは
覚えていたんだけど、K君もこんな泣けるような言葉を言ってくれたんだ。
それから何度か同級会があったけれど、K君とは深い話をしたことはないし
彼が進んで話をしてくることもなかった。


手紙を読み返すことがなかったらK君を思い出すこともなかった。
love letterではないけれど K君の優しい想いを汲み取れる手紙。

もし今度同級会があったとしたら 言ってみようかな。
「手紙のこと 覚えてる?」って・・・




作品名:或る手紙 作家名:ゆう