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MISSION IMPOSSIBLE

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MISSION IMPOSSIBLE:LEO



 ある日俺は一大決心をした。
 次こそは、シャカに対して思い切り紳士的にふるまってみせる!
 題して「獅子座改造計画」(スチールセイントになる訳ではない←念の為)。


 ことの起こりは、女神の一言だった。

「アイオリアはいつも紳士的ね。星矢も少しは見習ってくれたら嬉しいのだけど」

 グラード財団の総帥でもあらせられる女神は、誕生パーティの為に日本に一時帰国されていた。
 俺もその護衛として三週間ほど城戸邸に滞在したが、青銅の少年達の女神に対する慣れ慣れしさは、確かに度が過ぎるように感じる。

「後で厳しく言い聞かせますので、何卒ご容赦を」
「あら、違うのよ。あの人達はあれでいいの。ただ……」
「ただ?」
「ほら、女の子ってたまには淑女のように、紳士的な男性に扱って欲しいものなのよ。判るかしら」
「女神以上の淑女が、この世におりましょうか」
「ありがとう。ふふ、アイオリアの恋人は幸せね、きっと」

 女神と言えども多感な少女、そんな他愛のないことを口にされるお気持ちは、多少なりとも理解出来る。
 しかし、この時俺の頭を過ぎったのは、他でもない「恋人」のシャカのことだった。

 シャカに関する限り、俺の態度は紳士的には程遠い。
 あいつへの思いが強過ぎて、相手を喜ばそうという点にまで頭が回らなかったのは事実だ。
 いつも求めてばかりで、シャカの気持ちや体のことまで気遣ってやれなかったことに今更ながらに気付いた。
 まして、禁欲的なあいつはそういった事柄に対しても妙に潔癖だ。
 体を繋げること自体に抵抗を感じていたとしても、不思議はない。

「女神、私はまだまだ未熟者です。そんな風に仰って頂ける価値などございません」

 この時俺は決意したのだ。
 必ずや、シャカを優しく労わり、今よりももっと頼りにされる男となろう!
 己の欲ばかりを追求する輩など、もはや男として認めん。
 こうして俺は、聖域に帰る日を指折り数えて待つことになったのである。


 女神と共に聖域に帰還し、教皇宮への報告を済ませたのは、19日の夕方になってからだった。
 勿論この日がシャカの誕生日であることは、百も承知だ。
 だが、シャカはこういったことに無頓着であり、今まで俺の誕生日に何かしてくれたという記憶もなかった。
 俺ばかりがプレゼントなど用意したら、却ってシャカにプレッシャーを与えかねない。
 ここはお互い忘れたフリをして、ただ静かに過ごすだけでいい。

「ただいま、シャカ」

 聖衣のまま処女宮を訪れると、珍しく愛想の良い声が出迎えてくれた。

「ご苦労だったな」

 三週間ぶりの逢瀬に逸る気持ちを、無理にも抑える俺の前に現れたのは!
 いつもの洗いざらしの木綿ではなく、恐れ多くも先日女神があつらえて下さった薄物を纏ったシャカだった。
 大胆に露出した肌に、思わず目が吸い寄せられる。
 思わずゴクリと喉が鳴ったが、露わになったその肩が記憶にあるよりももっと華奢なことに改めて気付いた。

「───元気そうだな。だが、ちょっと痩せたか?」
「……え……? あ、ああ」
「薄着で風邪を引くなよ。朝晩はもう冷えるからな」

 紳士的に。あくまで紳士的に。

「ええと、沐浴はまだであろう? 湯を張ってある」
「ありがたい。では、遠慮なく使わせて貰うか」

 シャカとの付き合いは長いが、湯を張って待っていてくれたことなど一度もなかった。
 それだけで充分奇跡的なことなのだから、これで満足しなければ。
 今までに何度も引っ張り込んだ経験はあるが、今日は紳士だからひたすら我慢だ。

 そう思いつつ風呂に入っていると、処女宮の入り口でシャカに呼びかける小宇宙を感じた。
 誰だ、無粋な奴は!
 そう思って五感を研ぎ澄ませてみると……この小宇宙はムウだな。
 さっきは白羊宮の入り口で出会いがしらに、

「今日は何の日か知っていますか?」

 なとど訊いてきたので、素知らぬ顔をしてやった。
 あの思いっ切り呆れたような表情には、全くムカムカする。
 しかも、俺が来ていると判っていながらこの時間にわざわざやってくるのは、嫌がらせに他ならない。
 シャカ、そんなヤツと何を喋っているんだ。

 気になって風呂もそこそこに部屋に戻ると、何やら包みを手にしたシャカが戻ってくるところだった。
 気のせいか不機嫌な顔をしている。

「───ムウか?」
「……紅茶をくれただけだ」
「そうか」

 つまらぬ嫉妬だと判っているから、そんな投げやりな口調で答えなくてもいいだろう。


作品名:MISSION IMPOSSIBLE 作家名:saho