星の薫り
昼間の暑さはどこに行ったのかと思うほどに涼しいのは
虫たちの高い音階の音色のせいかもしれない
ときどき車の走る音も聞こえるが
虫たちはそれには驚いた様子もなく鳴いてくれている
空には月も星も見える
昨日もその前も見えていたのだろうが
ぼくは随分と観ない気がしていた
ゆっくりと星を観れば薫りがしてくるような気になる
ゆっくりゆっくりと感じられる
遠い夜空の記憶
何光年の光が今届けられたように
君とぼくの光は飛び立ったままここには戻らない
けれども
星を観ていると思いだしてしまう君の薫りを
カサブランカの大きな百合の花を
身に纏う君の姿
ぼくの身体から抜け出した君への想いは
いまも宇宙を漂っているのだろうか