愛と勇気
「先生、質問です。愛と勇気が世界を救うのなら、歴史を学ぶことにはなんの意味があるのですか? 歴史は戦争と虐殺の繰り返しです。間違った方法で世界を救おうとした記録から学べるのは、同じ失敗を繰り返さないようにするということだけではないですか? それよりも、もっとちゃんとした愛と勇気で世界を救う方法を考えた方が建設的なように思います」
「いいや、それは違う。戦争と虐殺こそが、愛と勇気なのだ」
「どういうことですか?」
「戦争は、愛する者のために行なうものだ。自国を守るため、恋人を守るため、友人を守るため、尊敬できる者を守るため。中には、自分の身を守るために戦う者もいるだろうが、自己愛だって立派な愛だ」
「では、虐殺はなんですか?」
「虐殺は、人の心を持つ者にはできないことだ。人の心を捨て、人ならざる者になること。それには、とてつもない勇気がいる。戦争と虐殺は、愛と勇気を持って行なうものなのだよ」
「なるほど、それは分かりました。ところで、先生は愛と勇気で世界を救えると思いますか?」
「それは分からん」
「ですよね」