球体地獄
球体地獄
瞼を喪失した眼球は
剥き出しのアイを
粘度の高い涙で覆い隠そうと必死でした
そんなひ弱な眼球を
指の群れは執拗に責めました
眼球の球体たる所以である
曲部をなぜてはなぜて
でっぷりとした中年指の腹は
涙腺に全体重でのしかかり
涙一滴逃がすこと無く
激しくそして時に激しく
機械的運動を永続させました
眼球はもう人生を終えたいと願いました
しかし瞼が無ければ目を閉じて
祈ることができません
眼球はなんとかして
SOSを流そうと
涙腺を手繰りましたが
それも叶いませんでした
いつしか指は無数となり
眼球は果てることも
乾くことも赦されずに
世界を凝視するのです
嗚呼
瞼さえあればと
憤りに似た悲しみ
永遠に次ぐセンセーションの連なり
地獄を模した淫猥なアトラクション
貴方の眼窩にて
いずれ近いうちに・・・