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本日は海星なり

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【海面に映り続けた星が剥がれ沈み生き物】



ヒトデは高速で回転しながら沖へ吹っ飛んでいた
ヒトデは時速30kmで放物線を描きながら臨終を迎えようとしていた

*****

ヒトデは浜辺にいた
辛いことがありすぎた
死ぬつもりだった

海には辛い思いでしか無い
沖に行く波も
浜に返す波も
悲しみを運んで反復運動を繰り返しているに過ぎなかった

ヒトデは思った
5つの腕を束ねる盤の中にある脳髄で思った

海星と称されるに足る人生ではなかった
私は海の屑星・・・海屑星と書いてひとでなし・・・

スターフィッシュと呼ぶ異国の響きに恥じる
魚であればきっと遠くへ行けただろう
悲しみの無い浜辺を求めて

ヒトデはそれでもそれなりに行き場を求め歩いた
腕の中央に刻まれた歩帯溝をくねらせ
その横に並ぶ管足をよじよじと蠢かせ
海底のデトリタス(沈殿物)に身をうずめつつ
丘を目指した

海よ・・・さらば
我死なば陸の星とならん

浜の白砂を空に見立てて
この身をそこに投げ捨てん!

ヒトデは波を脱して浜に登った
皮鰓が真夏の太陽にやられて
呼吸が静まっていく・・・

場違いな星のマークは
5本の腕を駆使して
波に連れ戻されないように
丘へ丘へと
砂浜に星をひこずったような跡をこさえながら
たゆまず歩いた

そして拾い上げられた
人間の子供の小さな手
5つの指がとても美しくて・・・

*****

「駄目よー、ケンちゃん!かわいそーでしょ。海に返してあげなさい」

母親の声に頷き
子供の手はヒトデを投げた

ぶん投げたと言ったほうが正しい
ヒトデは強烈なスナップによって回転を付与されて
ブンブンと沖へ飛来する


嗚呼

死ぬ

死ぬる

私の人生が閉じていく


体は海面を3度跳ね
ゆっくりとぷくぷくと沈降

しかし魂は★を脱して
空に飛んで行ったよ

ヒトデは空で本当の星になったというおはなし

作品名:本日は海星なり 作家名:或虎