鏡像ロット
一つ目
「いい子ね。」
家ではそういうくせに、他の人と話すときは
「不出来な娘で。」と言う母。
「愛してるよ。」
母にはそう言っていたくせに、他の女の人に
「あんなばかな女。」と言う父。
「君は特別だ。」
私にそう言うくせに、他の生徒全員に
「君は特別だ。」と言う先生。
「それかわいいね。」
新しく買った服をそう褒めていたのに、他の友達に
「あれださいよねー。」と言う友達。
「君には期待しているよ。」
肩をたたいてそう言ったのに、同僚に
「君ならやってくれると思っていた。」と言う上司。
「そんな、私なんて……。」
私の目の前では遠慮していたくせに、
「何で私のこと皆理解してくれないの。」と泣く後輩。
「愛してるよ。」
優しく私の手を握る、温かく大きな手を、
私は冷たく握り替えした。
(世の中は嘘つきばかり)