ZOIDS 外伝 惑星間戦争 プロローグ
迫りくるレブやスナイプマスターの攻撃を交わし、掴み、払い、投げ飛ばす。
火器管制もフルに稼働し、尚且つ彼用にカスタマイズしたゴジュラスは、各部のエンジンと、補助ブースターが追加され、俊敏性と機動性はアップしていた。
「大尉!ジェノザウラーです!」
「ちっ」
カミカゼのゴジュラスが踵を返すと、向こうにジェノザウラー1機がいた。
恐らく、盗賊の長。まずいことに、荷電粒子砲発射体制でいた。
「流石に荷電粒子砲をぶっ放されるとやばいな。すまんがゴジュラス、死ぬ気で突っ込むぞ!」
ゴジュラスはブースターを点火して一気にジェノに迫る。
だが、遠過ぎる。ジェノの粒子砲のチャージはもう完了していた。
「落ちろ!ゴジュラスよぉ!」
盗賊の長が叫ぶ。
ジェノザウラーが粒子砲を撃とうとしたその時
ジェノザウラーは蹴り飛ばされた。
「マーダ!?」
カミカゼが見た先には、ジェノの頭を蹴り飛ばしたマーダの姿。
「大尉。加勢しますよ!」
「ぼう・・・。ったく、ミス・エレシーヌはとんでもない探検家をよこしてくれものだ」
とカミカゼが言った時、ジェノザウラーが体勢を立て直していた
「坊主!やつがくる!」
「!」
ジェノザウラーのパルスレーザーがマーダを襲う。
マーダの俊敏性で、当たりはしなかったが、もう不意打ちは通用しない形となった。
「やば、逃げ…」
地形的にそれは無理であった。
マーダは攻撃を避けつついる間に、岩山の行き止まりに追い込まれていた。
それを塞ぐようにジェノが立ちふさがる。
「骨董品のゾイドごときに…、死んでもらおうか!」
盗賊の長がジェノのクローを振りかざす。
マーダは避けられない
「くっ…」
セルナは伏せるように目を閉じた。
だが、数秒たっても、気絶するか死ぬかもしれないような衝撃が襲ってこない
「なにボサッとしている。離脱しろ!」
通信機から聞こえるカミカゼの声。
目を開けると、クローを掴み、圧倒的なパワーでジェノザウラーの腕を吊り上げるゴジュラスがいた。
「悪いが容赦はしない」
ゴジュラスはその凶暴性をジェノに対し発揮し、強化されたパワーでジェノの腕をつかみながらジェノを岩山に叩きつけることを続ける。
完全にジェノはボロボロの姿になっていた。
「とどめだ」
ゴジュラスはジェノの頭部をかみ砕き、最後に速射砲でジェノのコクピットを貫いた。
ゴジュラスが咆哮すると、盗賊たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
軍人の4機のウルフも健在だった。
「よくやってくれた。お前たち。俺のゴジュラスもまさか無傷だとは思わなかったよ。」
「大尉こそ、よくご無事で!」
部下の軍人たちがカミカゼの言葉に返す。
「何、俺は簡単には死なんよ。あと坊主、礼は言うが、無茶はするなよ。」
マーダの通信に入ってきたカミカゼの声に、セルナは頭をかいた。
格納庫に戻ってきた二人、そしてもう盗賊の襲撃の予想もないということで、4人の軍人らも格納庫へとやってきた。
すると、エレシーヌが待っていた。
「すまない、少々手間取った」
「でしょうね、轟音は聞こえるし、あんたらの通信は丸聞こえだったわよ。まあ、ジェノザウラーがでてきたんじゃあ、あのゾイドたちでも手こずるでしょうけど」
と言ってエレシーヌは、通信を傍受する端末を見せつけた。
「うちの探検家に助けられたようで。ま、お互い様みたいだけれど。」
「ミス・エレシーヌ。貴女とは数年の付き合いだが、本当に謎だな。その傍受端末といい。」
「伊達に数年、危ない仕事や仲介屋、情報屋はやってないのよ。それよりも、いいもの見せてあげるわ。」
「?」
カミカゼもセルナも頭に疑問符がついた。
「これよ」
エレシーヌが壁のパネルを押すと、隠し扉が開いた。
「…色々、複雑な状況が見えそうだな。お前たちは、待機してくれ。念のため、やはり二人程度は外でも見張っていてくれ。あとは、ここのゾイドたちを回収する手筈を頼む」
「了解です。」
4人の部下が、それぞれ手筈を整える。
それを見届けて、二人はエレシーヌに導かれて中に入った・
その中は、個室のようなものであった。
明かりは既にエレシーヌがつけていたようで、見えるのは、端末。机。ベッド。そして、二つのカプセル。机の上には、エレシーヌが調べた跡がある日記。
「色々面倒なんだけど、まずはこの日記。全く読めないけど、これ地球の言語?」
エレシーヌは日記をセルナやカミカゼに押し付けた。
「えーっと、読めないですね…」
探検家のセルナも、まったく読むことができないらしい。
それをひょいとつかんでひったくると、カミカゼはそれを読み始めた。
「…色々と書いてあるが、まずそっちのカプセルを開いてほしいそうだ。」
「え?あなた読めるの?」
「いいから頼む。ああ、坊主は見ない方がいいかもしれん。中に入っているのは人間らしい」
「何それミイラなの?」
「いいから」
急かされてエレシーヌはカプセルを開ける。
開いたその中は、もはや砂のようなものが詰まって風化したものだった。
「大丈夫よ、もう中身は完全に風化して、ミイラでもないわ。セルナ、見ていいわよ」
「…なら、そっちのカプセルを頼む」
カミカゼが指示すると、エレシーヌはそちらも開ける。
すると、今度はカプセルから音声が入り、電子音と共に自動的にカプセルが空いた。
「えっ…この娘って…」
カプセル内部が空くと、エレシーヌは驚いた。
静かに、寝息をたてて、寝静まる美少女。
綺麗な銀髪のロングの少女。16ぐらいの年だろうか。
だが、美しく大人びた様子もあるその少女は、セルナに近い年齢にも見えた。
「どうやら、一番の収穫らしいな。この娘を、運び出す。部下たちを、呼んできてくれ」
「あー、はいはい。なんというか、凄く面倒なことに突っ込んだ気がする」
エレシーヌは愚痴を吐いて部屋を出た。セルナは、じっとその娘を見つめていた。
「触るんじゃないぞ。その娘の生命にかかわる。」
「あっ、はい…」
セルナは注意されて、下がった。
「そういや、坊主。名前は」
「セルナ・フリッツです。」
「ゾイドの操縦にあそこまで長けていたとは思わなかったぞ。マーダもどこかで操縦したのか?」
「いえ、レブと同じ操縦系統だと思ったので。予想通り、同じだったので動かせただけです。たいしたことありません」
「たいしたことない、か・・・。ふふっ」
微笑するカミカゼ。セルナは、何か読みすかされたような気持ちがした。
「すまないが、セルナ。その端末も動くはずだ。中に何かデータがないか、調べてくれ。」
「了解です!大尉さん。」
セルナは端末を動かした。ロクに良いデータというのはない。カミカゼから聞いていたような話に合致することが書かれていただけであった。
ただ、そこに、脱出したグローバリーⅢの艦長を務めた者の名が記載されていた
「ロウ・ムーロア?」
どこかで聞いたような単語がその名前からはにじみでていた。
一方のカミカゼは、ずっとその日記を読み続けていた。
(『恐らく、キルナはこの惑星に災いをもたらすだろう。キルナ重工業の彼らが作ったこのグローバリーⅢは、もうとうに旅立ったのだ。』 か…。)
作品名:ZOIDS 外伝 惑星間戦争 プロローグ 作家名:カクト