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ZOIDS 外伝 惑星間戦争 プロローグ

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二つの星があった。二つの星は遠く離れて、銀河の直径の長さに近いほどの遠さを持った。
一つの星、地球の大航海時代、一つの船が訪れたもう一つの星に、100年以上続く戦争が起こった。
戦争は終結した。たくさんの血肉と、鋼鉄の塊を散らして。
だが、それは本当の戦いの終わりではなかった。
決して、二つの星の存在は偶然ではない。必然だ。
これから話す物語は、必然が生んだ史上にない激しい戦記である。




プロローグ



「……部族間戦争、中央大陸戦争、大陸間戦争、西方大陸戦争、暗黒大陸戦争、ネオゼネバス帝国戦争、企業間戦争。この惑星Ziという星では限りなく戦いが続いた。惑星の殆どを巻き込んだその戦いは、200年以上も続いたであろう。
その中で大量破壊兵器を使わずに、激しい血肉が飛び散ったのは、戦闘機械獣ゾイドの存在が故。この星での最強兵器として君臨したゾイドだが、そのゾイドを使った戦いは、200年以上の激しい争いをもたらした。
国家間の戦争に終わらず、ゾイドを製造する2大企業の戦争もあった。
戦争が終わっても、人々のゾイドを使った闘争は終わらない。
人が死ぬ悲劇はなくなったが、人は結局「ゾイドバトル」という競技という形でゾイドたちを争わせた。
この星での争いは真には終わってないだろう。だが、もし今までにない、彼らが史上争ったことのない存在が現れるとしたら、その時、彼らはこの星のあり方に目覚めるだろう。
私はこれより、眠りにつく。この星を見守るために。恐らく、その時が来たら、私のことを起こしてほしい。もし私の肉体が死んでいれば、このカプセルの隣にあるもう一つのカプセルを開けてほしい。恐らく、彼らはくる。恐らく、キルナはこの惑星に災いをもたらすだろう。キルナ重工業の彼らが作ったこのグローバリーⅢは、もうとうに旅立ったのだ。」


───────グローバリーⅢ墜落地点に埋もれていた脱出ポッドの日記より








中央大陸の荒野を、1台のジープが走る。運転をするのは、サングラスをかけた金髪の長い髪を後ろに巻いた女性。助手席に座るのは、まだ青年になりかけている容貌を持つ少年だ。荒野の風が強く、少年は被った帽子を抑えている。
「あのー・・・あとどのくらいかかるんです?」
帽子を抑える少年は、おずおずと隣の女性に聞いてみる。
「まあ慌てなさんな。それに本当はもう見えているんだぞ?」
「え・・・?」
少年は前方を見る。荒野の風に吹かれ、前は見えない。
「本当は、だけどね。今回この地に探索に出たのはそのためよ。」





帽子をかぶった少年、セルナ・フリッツは少年ながら探検家だ。ゾイドに乗って探検に出ることもある。ゾイド乗りとしては1流とは言わずとも、そこらの盗賊には劣らぬ技量の持ち主。ちなみに言えば珍しくいろんなゾイドを扱うことも可能だ。
本来ゾイドは1種のゾイドを扱えるのがゾイド乗りの基本ともいえる。ウルフ型ならウルフ、コング型ならコング、といったように、それぞれに適性があるのだが…。彼は違う。
セルナにはそれがなかった。彼が今まで扱ったゾイドは数えきれるほどではあるが、多い方だ。同じく探検家である父に教わり、ウルフやゴドス、イグアンといった小型ゾイド。
時にライガーやザウラータイプなどの過去の戦争で主力となったゾイドを扱って父と共に武装集団を退かせたこともある。一度だけ、ゴジュラスタイプにも搭乗したことはある。



そんな彼が向かう先は、かつての大戦で、この星の歴史を大きく動かした一つの起点となるべきものであった。




「到着よ。」
女性がそう言ってジープを止める。
セルナも降りるが、その場所はただ目の前に大きな岩山があるだけにしか見えなかった。
「あの…ここで何か?」
セルナがおずおずと聞く。
女性は答えずに、ついてくるように手で指示して歩いていった。
気が付けばその先に、同業者らしき別のグループがいた。
用心棒であるのか、数機のゾイドもあった。
「ミス・エレシーヌ。お待ちしていた」
「ええ、こちらこそ。カミカゼ大尉。」
カミカゼ大尉と呼ばれた、その男はセルナを連れてきた女性、エレシーヌと手を交わした。
「こちらが、うちが雇った者よ。」
エレシーヌは後ろにいるセルナをカミカゼに紹介する。
「ずいぶん若いな。これが探検家の?」
「ええ、若くても、割と優秀なのよ。ゾイド乗りとしてもね」
そんな風に紹介されるセルナはただ焦るだけだった。
カミカゼも勿論、その向こうに待機する男たちも屈強な兵士だった。
カミカゼ大尉というように、恐らく彼らは軍人だ。カミカゼもそうだが、兵士たちはカービンを所持してる。
待機しているゾイドにも、コマンドウルフ数機の中に、ゴジュラスが1機そびえたつ。
「それは結構だ。恐らく、ゾイドとの戦闘に慣れているほうが、よいかもしれないからな。注文通りに連れてきて助かるよ。ミス・エレシーヌ。ではついてきてもらおう」
カミカゼはそう言うと、二人についてくるように言った。





ずいぶんと歩いた先に、岩山の影に隠れて、何か金属的な部分が見え隠れしていた。
カミカゼは、その金属的部分に触れた。
「岩山の中に機械が?」
埋もれた金属部分を触れるカミカゼに、セルナが首を傾げた。
「ふふ、ゾイドではないぞ。いや、むしろゾイド以上のものだろうな。」
金属部分をもっと掘り出すと、パネルのようなものが出てきた。カミカゼはそのパネルを開け、番号を入力した。
「開くぞ、下がってもらおう」
カミカゼはそう言って二人に指示した。
おずおずと下がる二人。セルナはエレシーヌに問う。
「…なにが起こるんです?」
「さあ、ここまでは私も知らないわね。ただ、ここがどういう場所なのかは、あとで説明しましょう。」
そう言い交わす二人に、カミカゼは合図した。
「いくぞ」
カミカゼが合図をすると、岩山の一部が砕け落ち、金属部分がどんどん曝け出して、尚且つ、10mぐらいの高さと横幅を持つだろう空間が出てきた。
「この中だ。ついてきてもらおう。」
カミカゼはそう言うと、携帯したカービンを持ち始めた。気が付けばこの男、服の中に色々な武器を所持していることがわかる。
「中は暗いので、できれば明かりを持ってくれると助かる。」
そう言われてすぐ、セルナは探検家としていつも携帯している明かりを灯す。
充電池式ランプだが、いざとなれば発電もできる非常用にも使えるランプだ。
「なかなか原始的だが、探検家としてはそちらのほうが使いやすいというところだな。いくぞ」
カミカゼは中に進んでいくので、二人もそれについて行った。




だいぶ奥まった空間に入り、空気がよどんでいる空間へとたどり着いた。
「ここで行き止まりですか?」
「ああ、この”遺跡”の電気は生きているはずだ。すまないが、探してくれ。」
そう言ってカミカゼも二つのライトを取り出して、片方をエレシーヌに渡した。
「あたしもなの?レディを使わせるなんてね」
「申し訳ないな。あまり余裕はないんでね。」
急かすカミカゼに、エレシーヌも仕方なく電源を探し始めた。
「これか?」
ランプを壁に灯すと、それらしきものがみえる。
セルナは、そのボタンを押す。
とたんに、その空間が明るくなった。