教師
山田は東大を卒業していた。柴田は地方の国立大である。
夏休みも終わり、2学期が始まった。
大学受験を前にしている3年生から山田教師への不満が上がった。一方柴田の評判は良かった。教科主任の但馬は二人の授業を見学した。
山田は論理だって的確に教えているが、生徒の反応を見ていないのである。悪く言えばページ数をこなしているだけである。
柴田は経験があるだけに「解らなければ質問しろよ」と時々付け加える。
放課後でも生徒の質問に答えているようである。
柴田先生はバレーの顧問も引き受けた。生徒からは人気のある先生であった。
山田先生はと言えば、スポーツ音痴の様である。そのうえ人付き合いも苦手のようであった。明日が体育祭と言う日。山田先生は去年の看板の画鋲を取るる様に言われた。そこには平成23年 秋季 体育祭と書かれた紙が張り付けられていた。山田先生は丁寧に画鋲を爪で取っていた。
「山田先生まだですか」
20本ほどの画鋲が10分経っても取りきれない。生徒が手伝いに来た。生徒はプラスチックの画鋲取りを持っていた。
「便利なものがあるんだね」
「うっそ」
生徒は呆れている。
万事そうであった。
有る時校長が人事課の課長に山田先生と柴田先生の事を訊ねた。
課長とは同期であり内密でと話してくれた。
「全く対照的で。山田先生はペーパー試験は満点です。ここ10年居なかったですね。面接は何を言っているか解らない感じでした。教師になる動機は食うためと答えました」
「柴田先生は・・・」
「ペーパーが40点台でした。面接は評判良かったです。親が自分の子に教える様に解るまで教えますと言っていたようです」
「採用試験はペーパーが主だから仕方ないですな」
どちらの先生に教えて貰ったら良いか、生徒は先生を選べないし、当たりはずれで言うなら、外れのくじを引いた生徒は悲惨だ。