永遠のライバル
俺は対峙した敵に鋭い眼差しを向けた。
サム、不倶戴天の敵。
俺が愛するベッキーを奪い取った、ジゴロ野郎だ。
こみあげてくる怒りを抑えられなくなった俺はついに動いた。
2メートルを跳躍し、全体重をかけた渾身のパンチを浴びせかける。
だが・・・。
「甘いなリック」
サムはひらりと体をかわすと不敵な面構えで笑った。
「フン、おまえとはやはり決着をつけねばならんようだな……」
俺は、軽く着地すると再び向き直った。
それに対し、やつはゆっくりと回り込み、腰を低く構える。
「来る!」
俺は全身の闘気を集め、強烈な攻撃を受け止めるべく、防御態勢をとった。
が、その時、ふいに俺の体がふわりと浮くのを感じた。
「だめでしょ、シマポン。こんな所で騒いでいては!」
俺を抱きあげたのは、住居にしている人宅の住人だった。
見ると、サムの方も別の人間に抱きかかえられている。
「もう、クロスケったら・・・。ご近所に迷惑でしょうが・・・」
俺は完全に切れた。
「ババア、離しやがれ! だいたい俺の名前はシマポンじゃない。パニッシャー・リックだ! やつだってクロスケじゃない。サム・ザ・ブラックと・・・」
だが、こいつは全然聞いていなかった。
「ハイハイ、お魚買って来ましょうね」などとトンチンカンなことを言うだけだった。
しかも・・・。
「やめろ! 俺を閉じ込めるんじゃない!」
こいつは俺をブタ箱に閉じ込めると、恐ろしい場所に連れて行きやがった。
そこは・・・。
「お前だけは許さねえ! フランク・・・」
「それはこっちのセリフだぜ、ジャック!」
貧弱な新参者が、おデブなメスネコ、ベッキーを奪い合っているのを、俺達は薄笑いしながら見下ろしていた。
「あんなブサイク猫、どこがいいんだか」
サムが毛づくろいをしながら呟いた。
「まったくだ。俺達も昔はどうかしていたぜ」
今は無二の親友となったサムを相手に俺は相槌を打った。
激しい戦いを繰り広げる、フランクとジャックを見下ろしながら、
サムがポツリと言った。
「まあ、ベッキーがどちらを選ぼうが、俺達手術済みには関係のないことさ」
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作品名:永遠のライバル 作家名:おやまのポンポコリン