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凜として~花のように生きる~

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凛として

 いつも前を向いている一輪の花のようでありたい

 風に吹かれて、その方へとなびきながらも

 けして折れない花のような強さを持ちたい

 しかなやかに したたかに

 逆らわず さりとて 迎合することもなく

 ただ流れに身を任せて漂いながらも

 運命に屈せず、流されながら生きてゆきたいと思う

 若い頃から 憧れるのは百合の花

 深い谷あいにひっそりと開く一輪の白百合のように生きてみたいと願っていた

 たとえ見る人がいなくても

 前を向いて 太陽から眼をそらさずに真っすぐに花ひらく

 自分だけの花を 与えられた場所で精一杯咲かせたいと


 月日は流れ

 理想や夢だけでは けして生きてはゆけないことを身に滲みて知った

 それでも 自分はやはり一輪の花だと思う

 きれいだとか そんな意味ではなく

 谷間で人知れず花ひらく―そんな目立たない地味なところが

 ひどく似ているように思えてならない

 雨の降る日も 風の吹く日も 折れそうになりながらも

 前を向いて咲く花

 たぶん 人は誰しも一生に一度 自分だけの花を咲かせるのだろう

 咲き誇る大輪の花もあれば

 野辺にひそやかにひらく雑草のような花もあるだろう

 だが どの花も精一杯咲くからこそ美しい

 華やかだとか 派手だとかという次元ではなく

 一生懸命に力を出し尽くして咲くから 美しいのだ

 それは生命の輝きともいえるかもしれない

 小さくても良い 目立たなくても良い

 一生かかって咲かせた花は自分だけの花だから

 貴く清らかな至上の花

 私もいつか そんな花を咲かせてみたい

 
 いつか娘にも伝えるつもりだ

 あなたの名前は優しい花にちなんで名付けたのだと

 あなたがお腹にいた頃に耳を傾けたとあるピアノ曲のタイトルにちなんだのだと

 谷間に人知れず咲く白百合は 他者の痛みを知っている

 他人の痛みを推し量れる人は この上なく優しい心を抱いている

 誰が見ることもなくても凜として己れの花を咲かせている

 大きくなったら そんな女性になって欲しいと願いを込めて名付けた娘

 その曲の名は〝Lily of valley~谷間の白百合~〟