away...
静かに降る雨風の音だけが聞こえる部屋に
その人だけに設定した私の一番好きな着メロが流れた
胸が痛いほど高鳴り 慌てた手は携帯に飛びつく
昨夜やっと衝動的に送ることのできたメール
そのメールの返事とすぐ分かった
本当はすぐに開いて見たいのに
握りしめた携帯をしばらく見つめて テーブルの上に置く
コーヒーをお気に入りの豆から挽いてドリップすると
いい香りが部屋に広がった
逸る心を抑えて ゆっくりと携帯に手を伸ばしメールを開く
「久しぶり」という月並みな挨拶の後に飛び込んできた「転勤」という言葉
今 私の知らない遠い処に向う列車の中だと言う
何の予告も無く 突然突き放された私の心は
行き場を失い ただ宙を彷徨う
いつの間にか静かに降っていた雨は止み
窓の外の遠い空には油彩画のような雲が広がっている
その空を 空っぽの眼で眺める
もう同じ空を見ることはできなくなってしまった
同じ空気を呼吸しているのを 感じることができないほど遠くへ
行ってしまった…
これで良かったのかも知れない
これで私の想いが断ち切れるのなら…