名づけられた世界
名づけられた世界
小鳥は目が覚めて驚いた。
そこには自分が創った樹がそのままの形で残っていた。
これを、この小さな少年が大切に大切に保ち続けてくれたのだろうか。
もうそれだけで胸がいっぱいになってしまった。
「ありがとう。約束を守ってくれたんだね。」
けれど少年は何も気にしてないように、旧友に逢えたかのように楽しそうに言った。
「久しぶりだね!小さくなった?」
「君が大きくなったのさ。」
「ふぅん・・・。小鳥くんはどうして命を宿すことができるの?」
「私はこの世界の修復の使命を持った者だ。」
「???」
もちろん一言では理解できまい。
しかし、小鳥の方はすでにわかりきっていた。この少年も、小さな小さな再生の神の類なのだろうと。
世界の希望なのだろうと。
小鳥は樹に息を吹きかけた。すると樹が見る見るうちに生長し、大きな樹木になった。
そして樹の枝を折り取ると、地面に刺し立てた。5本ばかり立てると、瞳を閉じ、静かに唄いはじめた。
その唄はなんとも言えない、ふしぎな音色だった。
すると地面に刺さった枝が人の形になり、小さな子供が5人立っていた。
「わぁ、お友達だぁ!」
「この子達は君が育てるんだ。」
「わかった。」
「君がこれをやるんだ。できるね?」
「うん。」
この小さな神がどんな世界を再生していくのか。
それがとても気になったが、せっかく希望を与えられたのだからとある神も別の世界の再生をしなくてはならない。
「さて、私は次の世界に行くことにしよう。後は任せたよ。君がこの世界の主になるんだ。」
そういうととある神は飛び立つ。
期待を胸に抱きながら。
飛び立つとき、微かにメロディが聴こえた。
幼い、いや、物心のつく年頃になった、その少年の唄に、そしてこの世界に、いつか名前をつけたいと思った。