名づけられた世界
小鳥は羽を広げ、空へと舞い上がった。
少年はそのときから卵を大切に守り、樹を育てた。
樹はいつまで経ってもそのままだった。
つぼみをつけることも、大きくなることもなかった。
少年は細い木を集めて小さなねぐらを作った。
青い卵を抱えながら眠った。
朝には水を汲み、樹にかけてやった。
それを小鳥は、転生した卵の中でゆっくりと、見守り続けた。
期待する反面、諦めてしまうのだろうともわずかに絶望した。
樹は自分が何かをしなくては姿が変わらない。
飽きっぽい命には保つことが難しいのだ。