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アジュンマ~、今日の晩ご飯なに?から始まるつまんない小説

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「アジュンマ~、今日の晩ご飯なに?」
「アジュンマじゃないでしょ。ヌナとお呼び!ヌナと」
これがいつものおれたちの基本的な会話だ。
おれたちの宿舎にはお手伝いさんが2人いる。
そのうちの一人が家庭の事情でしばらくお休みすることになったらしく、2週間前、臨時の新しいお手伝いさんがやってきた。
普通、お手伝いさんというのはおれらの親くらいの年齢の人がほとんどなのに、その人はとても若かった。
初めて彼女が宿舎にやってきたときは、なんだかンバーがソワソワしていたのをよく覚えている。
「こんにちは。臨時でしばらくの間こちらでお世話になります。よろしくお願いします」
見た感じ27~8って感じ。そしてなかなか綺麗。
恥ずかしがって距離を置いてるメンバーを尻目に、おれは彼女に興味津々だった。
「ねぇねぇ、年齢はいくつなの?」
「秘密です」

彼女はいくら聞いても絶対に年齢を教えてくれなかった。
だからおれは彼女が教えてくれるまでわざと「アジュンマ」と呼ぶことにした。
これはおれのプライドでもある。

他のメンバーは彼女のことを「ヌナ」と呼んだ。
彼女は美人なのにとても気さくで話もおもしろくて、メンバーたちとあっという間に仲良しになった。
「おい、アジュンマじゃないだろ。ヌナって呼べよ」
ヌナ派のヒョクチェはいつもおれを怒る。
「だって、お手伝いさんは普通『アジュンマ』じゃん!だからおれはずっとアジュンマって呼ぶ!!」
そんなおれたちの会話を尻目に彼女は夕食の支度に取り掛かっていた。
彼女の特徴は、たまに料理に日本食が出てくるところだった。
これまでのお手伝いさんは、ほぼ100%韓国料理だった。
もちろんおれたちもその味が一番しっくりくるし。
でも彼女が作ってくれる日本食は本当においしかった。
今まで知らなかった日本食もたくさん出てきた。
おれは彼女の作る料理が大好きだった。
「ねーねー今日は何?」

せっせと作る彼女のところに言っておれはいつものようにしつこく聞いた。
「もーうるさい、すき焼きよ、す・き・や・き」
「『すきやき』?何?すきやきって。それも日本食?」
「そう!ドンヘの好きな、お・に・く」
「肉!!??鶏肉?豚肉?」

「なんと牛肉でーす」

「まじでぇーーー?やったぁー!!」
おれたちは体調管理も兼ねて、普段家であまり肉は食べない。だからこうしてたまに食べるお肉のときは俄然テンションが上がる。
何かのお祝いとかでもない、いつもの夕食でお肉が出るなんてラッキーだ。
彼女が宿舎に来てから、メンバーたちがリビングに集まる機会が増えた。
おれはいつも彼女の料理を見に行くし、必ずつまみ食いをして怒られる。
トゥギヒョンはさすがに部屋にこもってるけど、ヒチョルヒョンとハンギョンヒョンもリビングでゲームするようになったし、
ヨンウンヒョンも飲みに出ることも減ったし、なぜかソファーでわざわざ昼寝をする。
下の階からは、ヒョクチェが頻繁に来るようになった。
なんだよあいつ。前はおれが誘っても「面倒くさい」つって、なかなか上がってこなかったくせに。
彼女は主に上の階の担当で、おれ達の食事の支度が終わってから下の階へ手伝いに行く。
ヒョクチェはおれとゲームしてても、彼女が降りるときは一緒になって下へ降りるので、おれも一緒に行く。
「なんだよ、お前ごはん食べないのかよ?」
「おれも下でごはん食べる!」

おれは彼女の行動に合わせて宿舎を移動していた。
下の階へ行くと、こちらもリビングにほとんどのメンバーが集まっていた。
「ヌナ~、お腹すいて死にそうだよー」
ジョンウンヒョンが、ソファーで倒れていた。
ギュヒョンとソンミンヒョンはゲームに夢中ながらも「ヌナ~今日は何~?」と声をかける。
キッチンではリョウクが彼女のために下ごしらえの準備をしていた。
「リョウクありがとう~。いつも助かるー。食材はほとんど切ってあるからあとは調理するだけね。すぐできるから待っててね!」
リョウクは褒められてすごく嬉しそうだった。
なんかちょっと羨ましかったので、おれも手伝ってみることにした。
「アジュンマ、このお皿並べればいいの?」
「あ!ドンヘは何もしなくていいから。ゲームでもしてて」
なんだよ。なんかおれが手伝うと迷惑みたいな言い方・・・ちょっとショックだ。
ヒョクチェはそんなおれを見て、ざまーみろというような顔をした。
ムカついたので腹を殴ってやった。
しばらくすると夕食の「すき焼き」ができた。
醤油のいい香りがして、見るからに食欲をすする鍋だった。
「うまい!うまい!なにこれ?」

「ちょっと、ご飯おかわり!」

「リョウク、卵とってきて」

『すき焼き』は大好評だった。

おれも今まで食べた日本食の中で一番好きだった。
夢中になって食べてるおれらを見て、彼女はとても嬉しそうに笑っていた。
あっという間に平らげて、満腹になったみんなはソファーに寝転びテレビを見出した。
すると彼女は後片付けを始め、気づいたリョウクが手伝おうとしてキッチンに向かったが、おれはそれを制して彼女のところへいった。
「今日はおれが手伝う」

「えっ?どういう風の吹き回し?なんか裏があるんでしょー?」
「なにもないよ!だってさっきアジュンマがおれのこと邪魔みたいに言うから・・・」
「いじけてんの?」

「違うよ!・・・いや、違わないけど・・・」
彼女はくすっと笑っておれの背中をぽんぽんと叩いた。
「ありがと」

初めて彼女に言われた言葉。おれはなんだか胸が熱くなってつい顔がにやけてしまった。
彼女と2人で洗い物をしているおれ。メンバーが驚いた顔で見ていたけど、平気だった。
その日、彼女が帰ってからおれは部屋で一人考えていた。
彼女が来てからもう1ヶ月も経つのか・・・
確か2ヶ月くらいの臨時って言ってたから・・・てことはあと1ヶ月??
その時、おれはふと思った。

おれが彼女について知ってることって何だろう?
名前、それと・・・

何も出てこない。

年齢、家族構成、好きな音楽、好きな食べ物、どこに住んでるのか・・・何も知らない!
一ヶ月も一緒にいて、おれは彼女について何も知らなかった。
おれはすぐにヒョクチェの部屋に行った。
「なぁヒョクチェ、アジュンマってどこに住んでるの?兄弟とかいるの?どこの会社のお手伝いさんなの?」
「さぁ?あ、でも妹がいるとは言ってた。あとは何も知らない。」
「え?妹がいるの?ヒョクチェなんで知ってるの?」
「だいぶ前に家族の話したときに言ってたよ」
「家族の話したの?なんで?いつ?」
「うるさいなぁー。気になるなら直接聞けばいいだろ」
「なんだよケチ」



おれは翌日彼女が宿舎にくるのを今か今かと待っていた。
女性を待つなんていつぶりだろう?なんか自分でもおかしかった。
今日は色々彼女について知ろう。そしてあわよくば一緒に年齢も聞き出せるかも??
ピンポーン

来た!彼女だ。

おれは玄関に飛んでいった。ドアを開くと、そこには休職してるはずのお手伝いさんが立っていた。
「あれ?アジュンマお休み中じゃないの?今日はどうしたの?」
「え?聞いてない?用事が早く終わって今日から復帰することになったのよ」