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つだみつぐ
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novelistID. 35940
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ひとつだけやりのこしたこと

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さとみの元夫、たかしは公的資金からもさとみの親や兄弟からも多額の借金をして事業に挑戦した。そしてその事業に失敗して自己破産した。(その頃やくざと親交を結んだ。)
たかしは借金の返済義務はなくなったが連帯保証人であるあるさとみの返済義務は残った。
さとみは破産前も破産後も働いて夫を支え続けた。

2008年2月、再度始めた事業もあまりの無計画で放漫な経営で失敗したたかしは家を出た。携帯に連絡しても居場所を告げなかった。一度現れた時、さとみのなけなしの貯金を持って去った。
たかしの乗っていった車のローンもたかしの携帯の料金もさとみが払い続けた。

「もううんざりだ。30年間おまえに我慢してきたんだ。」

さとみは「わたしが悪いところは直すから家に戻って。」と泣き続けた。体調を崩し何も食べられない日が続いた。

突然弁護士から連絡があった。
「たかしさんは円満な離婚を望んでいます。話し合いたい。」

返事はできなかった。


そしてたかしの残した1500万円に上る借金を一人で少しづつ返していた。

ある日たかしが別の女と暮らしていることが判明した。



ようやくさとみの置かれている状況を理解したわたし(つだ)は強い怒りに包まれた。
「さとみは何も悪くないよ。たかしはあなたを利用して、利用し尽くして借金を押しつけてあなたを捨てたんだよ。そして次の女に乗り換えたんだよ。たかしのやっていることは犯罪だよ。許せないよ。戦おうよ。」

さとみは泣くばかりだった。
「戦うなんてできないよ。あの子たちの父親なんだよ。」

わたしのたかしに対する怒りは強まるばかりだった。



わたしはネットで調べたり、むかし司法試験を目指していた友人に問い合わせたり、公的な機関に電話をしたりしてさとみがどう立ち回ればよいのかを探った。

1.向こうは弁護士を立てているんだから、こちらも弁護士を立てて離婚調停を申請すること。
2.向こうが離婚を望んでいるのだから、こちらが条件を出せばいい。「これだけしてくれるなら離婚に応じる」って。
3.とりあえず現在の借金の総額・これまでにさとみが返した額・彼が持ち出したさとみ自身の預金・さとみが負担してきた車・携帯などの経費、こうしたものを一覧表として提出すること。
4.子供は成人しているから養育費は取れない。
5.慰謝料は当然請求できる。

さとみは「弁護士は立てない。お金がないもの。多分、どうせあいつには支払能力がないからどんな決定が出ても事実上お金は取れないと思うし。」と言った。
一覧表もわたしがせかして、手伝ってようやく完成した。

こうした作業の一つ一つがさとみにはつらくて悲しくて、なかなか前に進めないのだった。