あの日にかえりたい~第二章 恋の終わり~
口ごもっちゃいけないとこで
秀人が口ごもるから、
なんだか泣きそうになる。
"やめてよ…そんな言い方は。
好き、なんて思ってもないくせに"
自分でも信じられないくらい
嫌な言い方をしてしまって、
目を合わせていられなくなった。
"思ってもない、って、なにそれ
僕は…ちゃんと好きやったのに。"
弁解する、みたいな
秀人の真意が読めない。
"違うよ、私の言ってる好きは
友達とか仲間同士としてじゃなくて"
"恋愛感情としての、やろ?"
淡々としたその声に
やっと秀人の目をみた。
彼は真剣なまなざしだった。
そして、
ぽつり、と呟くみたいな言い方で。
"僕だって
恋愛感情でサヨさんをみてた"
空気が変わる。
"うそ。
そんな風にアプローチされた
覚えなんてない"
こういう時、素直になれない
自分の性格が嫌だ。
秀人の視線が、私から離れた。
"…ふ、そうやな。アプローチはうまくできんかった。自分なりに、伝えてるつもりやったけど、半面気づかれないようにもしてしまってたし"
"気づかれないように…?"
私は彼を見た。視線は合わない。
"本気で怖かったんや、サヨさんに
好きな気持ちがバレるのが。
あの時、あの状態で叶うわけないって
わかってたから"
はは…
秀人の乾いた笑い声が響いた。
いろんな言葉が脳の中を錯乱する。
私はもう、
頭の中が真っ白だ。
作品名:あの日にかえりたい~第二章 恋の終わり~ 作家名:奥野沙知子